いつか…





生きていてくれたらいいと思っていた。
それだけでいいと。

目の前に現れて、手をさしのべられて。
本当に嬉しかった。
生きていたという事実に胸が熱くなって、彼の事しか見えなかった。

なのに。
生きていてくれたらいいと思っていたのに。
人間なんて…魔族でも…欲張りなもので。
他国の軍服に身を包む彼がイヤだと。
再び俺の元に帰って来て欲しいと思っている。
…むしろ、生きていたら俺の元に戻ってくると信じて疑わなかった。
なんて思い上がりだろう。
俺から離れていくわけないと思っていたんだから。

目の奥が熱くなって、月を見上げる。
だけど無駄だったようで、そのまま雫が頬を濡らした。

俺を一人にしないって言ったのに。
全て俺のものだと言ってくれたのに。
別に、腕や足や命を俺に捧げて欲しかったわけじゃない。
傍にいて欲しかった。

彼が守ってくれた約束は死なないと言ったそのことだけ。
好きだと言ってくれたのに。
何より大切だと言ってくれたのに。
誰よりも、俺を見ていてくれたのに。
それなのに。
今はもう…彼の隣にいるのは、俺じゃない。

その現実に胸が締め付けられた。

陛下と呼ぶなよ、なんて。
彼が俺を陛下と呼んでくれたから言えたこと。




もう、世界の全てが滲んでなにも見えなかった。




明日からはまた元気に振る舞わないといけない。
みんなが気を使ってくれているのがわかるから。
俺は魔王なんだから。

大丈夫。まだ、大丈夫。
信じてる。信じられる。
いつか、必ず戻って来てくれると。

好きだと言ってくれた彼は嘘じゃないはずだから。
信じることしか出来ないけど。それが俺の愛し方。

仲間は沢山いるけど。愛してるのは一人だけ。お前がいなかったら、ダメなんだ。

だから。
いつまでもいつまでも。
どんなに傷ついても、どんなに辛くても。
俺は信じることを選ぶよ。



コンラッド…




悲恋じゃないけど、切ない系・・・。 そう、間違えないでっ!悲恋じゃないんですっ、決してっ!! ぅあーっ、めっさラブラブなんが書きたいっ