帰ってきたコンラッド コンラッドが帰ってきた。 そして、ユーリは前以上に、コンラッドのことばかり追っていた。 「ギュンター!コンラッドはっ!?コンラッドがいないっ」 「へ、陛下。コンラートでしたら、確か訓練場の方に・・・」 「そっか、ありがと!」 いましたよ。とギュンターが言い終わる前に、ユーリはお礼を言って訓練場に向かって駆け出していた。 「あぁ、陛下ぁぁぁーーーー!」 陛下を求める切ないギュンターの叫びが木霊したのは言うまでもない。 「みっけた!コンラッド!」 兵士たちと話をしているコンラッドに大きく声をかけた。 「陛下!なぜ、ここに?」 「ギュンターが教えてくれたんだ。あ、えっと・・邪魔、しちゃった?」 ごめん、と言うユーリにコンラッドが優しい笑みを浮かべる。 少なくとも、ココにいる中ではユーリしか目にしたことのないだろう笑顔を。 「いえ、構いませんよ。ただ、お一人でというのは感心しませんが」 「だって、コンラッドがいないんだから仕方ないだろう?」 言外に、心配なら俺の傍を離れるな、と言っている。 「そうですね。すいません。では陛下。ここで待っていていただけますか?」 俺の目の届くところにいてくれますか? 「陛下言うな、名付け親」 「ユーリ」 「うん、ここで待ってる。コンラッドのこと見てるから」 「それじゃ、カッコいいとこ見せないと。手を抜けないな」 「あはは!コンラッドはいつでもカッコいいって」 そういうユーリに有難う、と言って。コンラッドは訓練に戻った。 見せ付けられた兵士達はたまらない。 無意識な陛下。絶対わざとなウェラー卿。 はぁ、とため息を付くとコンラッドからの喝が飛んだ。 カッコいいなぁ、とコンラッドを見つめるユーリは、本当にコンラッドしか見えていない。 恋は盲目、とはよくいったものだ。 まぁ、恋している本人が恋心に気づいているか、というと微妙だが。 夜、ユーリが来てからたまに設けられるようになった夕飯後の団欒。 カタン、と言う音がして、コンラッドが立ち上がった。 それを引き止めたのはユーリだった。 「コンラッド、どこ行くんだよ?」 驚いたのは、コンラッドだけではない。 ギュンターもグウェンダルもヴォルフラムも。 「お前、このへなちょこ!なんでここしばらく、そうやってコンラートに干渉するっ!?」 「へなちょこは関係ないだろ!それに、いいだろ別に!・・なぁ、コンラッド?」 「心配しないでも、すぐに戻ります。ちょっと、お手洗いにね」 「あ・・ごめん」 ユーリが顔を赤くしてぱっと手を離す。 「なんなら一緒に行きますか?」 「いい!行かない、大丈夫!そんかし、早く戻ってな?」 「はい、すぐに戻ります。待っててください」 「うん」 その後、コンラッドが戻るまで落ち着きのないユーリに。 コンラッドが戻ると嬉しそうに笑うユーリに。 ユーリを愛してやまない皆の不満は増すばかりだった。 そして、就寝時。 「では、おやすみなさい。陛下」 「陛下じゃない」 「おやすみ、ユーリ。いい夢を」 「うん、おやすみ、コンラッド」 部屋の前で挨拶を交わして、ユーリは部屋に入った。 コンラッドはユーリが部屋に入るのを見届けて、警備の兵士達によろしく、と声をかけ、自室に戻った。 「ふぅ・・」 らしくなく、緊張していたらしい。 また、ユーリのそばで、こうして毎日が送れるなんて思っても見なかった。 笑いかけてくれる、あの笑顔が。俺の名を呼ぶ声が。愛しくて、心地いい。 明日の朝は、また、ユーリを起こしに行って、ロードワークをして。 「ユーリ・・・」 悶々としていても仕方がない。 コンラッドは上着を脱ぎ、腰の剣とベルトを外すとベッドに横になった。 眠ろうと目を閉じたとき、部屋の前の気配に首をかしげる。 遠慮がちにされるノックに、コンラッドはドアをあけた。 「どうしました?ユーリ」 「あ、コンラッド・・・。その、えっと・・」 「とりあえず、中へどうぞ?」 「あ。うん」 俯いたまま、促されて部屋の中へと入る。 「で、どうしたんですか?」 ベッドの縁に腰かけたユーリにコンラッドが尋ねた。 ユーリは目線をあわそうとせず、きょろきょろと落ち着きなく視線を彷徨わせている。 が、よし、と覚悟を決めたのか、コンラッドを見上げてきた。 「あ、あのさ!」 「はい」 「一緒に寝ちゃ・・ダメ?」 「は・・?」 「だ、だから!一緒に寝ちゃ・・」 「一緒にって、俺とですか?」 間抜けな質問だ。 「あ、当たり前だろ!他の誰かと寝るのに、コンラッドの許可をわざわざ取りに来るかよ」 「まぁ、他の誰かだったとしたら、俺が許可するわけないですけどね」 「で、ダメ?」 「・・心配・・いや、信用ないですか?」 俺がいなくなるかもしれいない、と。 「え!あ・・別に、そんなんじゃないんだけど・・・」 語尾が消え入りそうに小さくなる。 コンラッドは困ったように微笑んだ。 「すいません。自業自得ですから、仕方のないことだとわかっています」 「違うよ!心配とか、信用してないとかじゃないよ!」 「違うんですか?」 訊くと、今度はユーリが困ったような顔をする。 心なしか、顔が赤い。 「違うよ。えっと、コンラッドが帰ってきてすっげー嬉しいし! 自分でも、どうしようもないくらい、浮かれてるっていうか。 コンラッドがいるだけど、こんな、幸せすぎて。もっと、一緒にいたいな、とか思って。 ただ、ちょっと・・不安で。もし夢だったら、とか、思わないわけでもないけど。 一緒にいたら、そんな不安、なくなるだろう?少しは、安心できるだろう?」 「心配しなくても、もう二度と、あなたに黙っていなくなったりしませんよ」 「ダメ!俺に言っても、いなくなったらダメだ!」 ずっと、一緒だろう? 「ユーリ・・」 「一緒、だよな?どこも行かないだろう?俺のだよな?コンラッドは、俺のトコに戻って来たんだよな? 俺のコンラッドだよな?全部、全部・・」 「ユーリ」 コンラッドはたまらず、ユーリを抱きしめた。 「えぇ、全て。身も心も、俺の持つモノは、俺も含めて全て、貴方のものですよ。 大丈夫、どこにも行きません。約束します。絶対に」 「うん、うん・・。コンラッド」 コンラッドの背に腕を回し、しがみつくように、抱きついた。 「一緒に寝ましょう。不安だというなら、毎日でも構いませんよ」 「うん」 ユーリはぎゅっと抱きついて、コンラッドの首筋に擦り寄る。 「好き・・大好き、だよ。コンラッド・・」 「え・・?」 見れば、無邪気な顔でくすーと、寝息を立てている。 「ユーリ・・?」 それは、俺の都合よく解釈してもいいんですか? そんな思わせぶりな台詞を言って寝てしまうなんて。 コンラッドはユーリを抱きなおすとベッドに横になった。 おでこに1つ、キスを落とす。 「おやすみ、ユーリ」 明日の朝は大変なことになりそうだ。 でも、そんなこと、どうでもよくなるくらい、腕の中の存在がたまらなく大切で。 さっきの告白も朝になったら尋ねよう。 そう決めて。 コンラッドはユーリを抱きしめなおすと幸せそうに、目を閉じた。
えーっと。 今更な上に、ありがちな感じで(汗) きっと、すぐには不安じゃなくならないと思うのですよ。多分ね。 ダメだなー。かけなくて。スランプだなぁ・・ あぁ。題名は思いつかなかったので たまたまコレのファイル名になっていたのをそのまま使用(笑) 戻