ウェラー卿コンラートは天然のタラシだと思う。 いつでも誰にでも愛想が良くて、気が利くし、優しくて、カッコいい。 これでモテなきゃ誰がモテるんだ、とも思う。 でもさーぁ?仮にも、俺という恋人がいてだよ? それはないんじゃない?と思うわけで。 誰からのプレゼントでもニコニコ受け取ってんじゃねーよ!! 俺の 花、食べ物、洋服、タオル、市販のものから手作りまで。 様々なプレゼント。 一体、今日は何の日だ!?と思う。 でも、別に珍しいことではないらしい。 俺が、今、初めて知ったというだけで。 ・・・これは浮気じゃないのか・・・?違うのか? もしかして、俺が心狭いのか?? たった今目撃した、プレゼントを渡す現場。・・・ついでに告白も一緒だ。 本当に、たまたま目にしてしまった。 あんなもの見てしまうなら、コンラッドなんて探さなければ良かった。 ムカムカする。腹が立つ。ヤキモチを妬いている、と解らないほど俺もバカじゃない。 だけど、なぜかそれが・・ヤキモチを妬く事が、自分が凄く嫌な奴みたいで。 それに自分で嫌悪して、余計に気分が悪くなる。 はぁ・・。と吐いてしまうため息は、自分で止められそうもない。 「ひどいよな・・・」 呟いた言葉は、自分に向けたものか、コンラッドに向けたものか。 「俺も、何かプレゼントしよーかな」 俺はコンラッドから貰ってばかりで、何も返せていないから。 そう考えて、でも、と思う。 でも、他のプレゼントにまぎれるのは、いやだ。沢山の中の1つはいやなんだ。 コンラッドは、俺のなのに・・・っ。 「うー・・。最悪、かも」 大きなため息を付いて、俺は仰向けに寝転がった。眩しくて、目を閉じる。 少し冷たい風が、通り過ぎていく。 その時、顔に影が落ちて、俺は目をあけた。 明るい髪の毛が目に入った。 「なーにやってんですか、陛下―?」 「ヨザック・・」 「珍しーですね、お一人で。隊長はどーしたんです?」 「・・・・しらねー・・」 俺はプイ、と横を向いた。 ・・・こんなん、何かあったってバレバレだ。 まぁ、ヨザックに俺が隠し事できるとも思ってねーけどさ。 「どーしたんです?」 「別に・・」 ヨザックが俺の隣に座ったのがわかった。 「何か拗ねてます?」 笑いながら言うヨザックに、俺は恥ずかしくなって、顔を赤くした。 ちらって視線をやると、ヨザックが俺を見下ろして笑っている。 ・・・・いーや。ヨザックに愚痴ってやれ。 きっと、彼は何かアドバイスをくれるはずだから。 俺は身体を起こした。そして、悩みの種を口にする。 「・・・・コンラッドってさ、モテるよな」 「そーですねぇ。アレだけ男前ですし」 「ヨザックも負けてないと思うぞ」 「ありがとーございますーぅ」 おどけて言うのは、ヨザックの気使いだろうと思う。 本当にいいやつだ。 「プレゼント貰ってるとこ、みた」 「・・・あー・・。って、知らなかったんですか?」 「知らなかった。・・モテるって知ってたし。でも、告白されてるのも、プレゼント貰ってるのも、見たのは今日が初めてで・・・俺・・・」 「ショックだったんですか」 「・・・うん、多分。そうなんだと・・思う」 「坊ちゃんも一人前にやきもち妬くんですねぇ」 「なっ、どういう意味だよ!」 「いえね。何時もみたいに、笑って気にしないのかと思ってましたから。へーぇ。やきも ちねぇ」 「どーせ!・・・ヤな奴だよな、俺・・・」 「は?」 「だって・・・」 じわり、と滲んだ涙を乱暴に拭って、俺は唇を噛み締めた。 「あー、坊ちゃん?なんか思考が変な方向に行ってません?」 「・・へん?」 「はい。それは・・・、まぁ。俺が言うことじゃないですね。ねー、たいちょー?」 「へ?」 ヨザックが、言いながら後ろを向く。 俺もヨザックの視線を追って、そこにいたコンラッドを見て、思わず固まった。 「な、なんでっ」 「姿が見えないので、探しましたよ。陛下」 「・・・・」 陛下って言うのが、なんだか壁に思えて。 俺が、陛下って呼ばれなくないのは、コンラッドだけなのに。 そう思って、返事が出来ずに俯いた。 「ヨザック」 「へいへい。邪魔モノは退散しますってー。それじゃぁ、陛下。頑張って下さい」 顔を上げた俺に、ヨザックはウインクを1つ残して、去っていった。 頑張って、といわれても・・・。 俺はそろっとコンラッドを見上げた。 「隣に座っても?」 訊いて来るコンラッドに、俺は首を振ることで肯定した。 コンラッドはありがとうございます、と言うと、俺の隣に腰をおろした。 顔が上げられない。コンラッドのこと、見たいけど、見られない。 「探したんですよ?」 「ごめん」 「ヨザックとの話・・・」 「聞いてた?」 「えぇ、途中からですけど」 「・・・そっか・・」 「陛下は、・・・ユーリは、嫌な奴じゃないですよ」 「でも・・俺・・っ」 コンラッドを、独り占めしたいって、俺のものだって、思ってるんだよ? 顔を上げて、コンラッドにそう言った。 けれど、コンラッドは嬉しそうに笑って、俺の頬を指で撫でてきた。 「俺だって、そう思ってますよ。あなたを、独り占めしたいって」 「え・・」 「当然でしょう?モテる恋人を持つと、苦労するんです」 「そ、それは俺の台詞だろう!?」 「俺も同じだってことですよ」 コンラッドは微笑みながらそう言って、唇を寄せてきた。 触れるだけのキスを目を閉じて受け入れる。 「嫌な思いをさせて、すいませんでした」 「え?」 「プレゼント、きちんと断りましたよ?もちろん、告白も」 「なっ、え?あんた・・もしかして俺がいたの・・・」 「俺が、貴方に気づかないわけがないでしょう?」 「な、そ・・っ、信じらんねーっ!」 俺がいて、わかっててわざとあんなことしたのかよ!? 「ユーリ、ごめん?」 「う・・・」 こつん、とおでこをくっつけて、コンラッドが俺の目を見つめてくる。 顔が、赤くなる。 「わざとじゃないんだ。大体、ユーリがいるのに、俺が他の誰かになびくわけないでしょ う?」 「ぅ、ん・・・」 「俺が好きなのは、ユーリだけですよ」 「も、いいっ!わかったからっ」 コンラッドのいい声が、俺の耳を打つ。 「あぁ、でも・・やきもち妬いてくれて、嬉しかったよ。ユーリ。・・可愛かったしね」 恥ずかしすぎるっ!! 目の前で、コンラッドはにっこりと笑顔を浮かべている。 くそ、カッコいい。 「心配しなくても、俺はユーリのものだから」 「も、わかったってばっ」 「ユーリが、不安にならないように、ね」 そう言って合わさった唇は、今度は深く絡まって。 「ふ・・っん、ぅ・・」 息が上がった頃に唇が離れて行って、俺はコンラッドの胸にもたれかかった。 「も・・見られたらっ」 「平気ですよ。まだ、気分悪いですか?」 そんなもの、とっくに忘れ去っていた。 俺ってなんて単純なんだろう。 そのまま、俺はコンラッドの胸に擦り寄った。 「・・・大好き、コンラッド」 「俺もです。・・今夜は、俺の部屋に来てくれます?」 耳元に、囁くように言われたその言葉に、俺は赤い顔を更に赤くしてしまう。 「ユーリ」 もう一度名前を呼ばれて、俺はコクン、と頷いた。 「・・・いく」 でもまだ、もう少し、このままで。 そう言った俺に、コンラッドは笑って抱きしめてくれる。 「ユーリの、お心のままに」
私が書くと、どうしてもね、コンラッドがいかにカッコいいかを 書き連ねてしまいそうになります(汗) 戻