8 なまえ



「なぁ、コンラッド・・。どうして俺のこと陛下って言うんだよ?」
「は?」

コンラッドにしてみれば、どうしてそんな当たり前のことを、と言う感じだ。

「陛下は陛下じゃないですか」
「俺、いっつも名前で呼んでって言ってるのに」
「それでも、陛下ですから」
「俺は、その時だけ名前で呼びなおして欲しいわけじゃねーよ」
「陛下・・」
「またっ!陛下って言うっ」

コンラッドは思わず苦笑してしまう。
そんな思わせぶりなこと、言わないで欲しい。
自分にとって名前で呼ばないのは、一種のストッパーなのだから。

「どうして俺にだけ言うんです?他の者も、みんな陛下って言ってるじゃないですか」
「どーしてわなんないかな?俺は、コンラッドに。コンラッドだから名前で呼んで欲しい
んだよっ!」

この人は・・。どうして、こうやって自分を喜ばせるのが上手なんだろう。

「コンラッドっ!聞いてるのか?」
「聞いてますよ、陛下」
「聞いてないじゃんかー!」
「すいません、ユーリ」

そう言うと、ユーリが一瞬、きょとんとした顔をして、それから、にっこりと、本当に嬉
しそうに笑うから。
それだけで、俺は生きている意味を見出せる。
幸せを感じて、俺もにっこりと、ユーリに笑い返した。





「コンラッドー!」
「なんですか、陛下」
「あ、またっ!名前で呼べってば、名付け親」
「そうでした。ユーリ」

貴方が名前で呼べというのは俺にだけだから。
そのやり取りが特別みたいで嬉しいからだなんて。
わざとだなんて、気づいてないんでしょうね。

ね、ユーリ。



□あとがき■

同じようなのがどこかにありそうで怖いです・・・(汗)