バレンタイン 「あ、おつかれさま!コンラッド」 コンラートが剣術の訓練を終え部屋に戻ると、ギュンターたちと勉強をしているはずの有利がなぜか、 部屋にいた。 「・・・、どうしたんですか、陛下」 「陛下じゃないだろう?もう・・」 そう言って、ちょっと膨れて見上げてくる有利を可愛いな、なんて思いながら、 コンラートは笑顔を浮かべた。 「すいません、ユーリ。それで?どうして俺の部屋に? ・・まだギュンターに捕まっているものだとばかり思ってましたが」 「へへ、ちょっとね、無理言って早く終わらせて貰ったんだ。 そのかわり、午後は頑張らないとだめなんだけどさー。コンラッドをビックリさせたくて。な、驚いた?」 何をどういう風にビックリさせたかったのか・・・。 しかし、確かに驚いたのは事実なので、コンラートは頷いた。 「えぇ、驚きましたよ。まさか、部屋でユーリが待っていてくれるなんて、思っても見なかった」 そういうと、有利はやった、とにっこり笑顔になる。 本当に、可愛いと思う。 「それで、ユーリ?俺に何か用事があるんじゃないの?」 「あ、うん!そうなんだ!・・はい、コンラッド。こんなんで悪いけどさ。バレンタインチョコ」 そう言って有利が出したのは、マーブルチョコレート。 「あぁ、今日はバレンタインでしたか」 「そ。日本ではね、女の子が好きな男の子にチョコ渡して告白したり、 恋人同士でのイベントだったりってのがバレンタインなんだ。 ・・・最近はあんまりそうでも無いみたいだけどー・・・」 だから、はい。コンラッドに。そういって、有利がコンラートにチョコを差し出す。一粒。 「あ!言っとくけど、ちゃんと本命チョコなんだからな! ・・・コンラッドにしてかあげてないんだからなっ」 少し、赤くなりながらそう言って、やっぱりマーブルチョコ一粒をコンラートに差し出す。 だけど、受け取ってくれないコンラートに、有利の顔が不安げに歪んだ。 「・・・もしかして、チョコ、嫌い?あ・・それとも・・俺からのは、欲しくない、とか?」 言われて、コンラートは慌てて否定した。 「まさか!とんでもない。ちょっと、ビックリしちゃって。 すいません、不安にさせて。本当に、嬉しいよ」 「ほんとに・・・?」 「もちろん」 「じゃ、貰ってくれる?」 「喜んで貰うよ。ありがとう、ユーリ」 コンラートがにっこりと微笑む。 それを見て、有利も嬉しそうに笑った。 「じゃ、はい。コンラッド」 やっぱり差し出されるチョコ一粒。 コンラートは手を出した。 「ありがとう」 そう言って受け取ろうと思ったのに、有利がちがうー!と叫んだ。 「違うだろ!そうじゃなくて、はい!コンラッド!」 そう言って、ユーリの指が寄せられたのはコンラートの唇。 えーっと、これは・・・ 「食べさせて、くれるってこと?」 そう言うと、有利が顔を赤くした。 自分でやっておいて・・。 「そうだよ、もう!いちいち聞くなってば。ほら、コンラッド」 食べて?と首をかしげる有利。 コンラートは笑みを深くした。 「いただきます」 イラストはこちら。 コンラートは体を屈め、有利の指に唇を近づけた。 さりげなく、有利の背中に腕が回される。 コンラートの口が開き、白い歯が、赤でコーティングされたチョコを挟む。 そのまま、舌が伸びてきて、有利の指まで濡らした。 びくっと有利が手を引こうとしたが、それはコンラートによって阻まれた。 手首を捕まれて、丁寧に、愛撫するように、チョコと一緒に指までも食べられた。 「・・んっ」 舐められた指が、ちゅっと言う音とともにコンラートの唇から解放される。 「な、な・・な・・なんっ・・・」 有利は真っ赤な顔で、口をぱくぱくさせる。 かわって、コンラートはとても楽しそうだ。 「とても美味しいですね。ご馳走様でした。ユーリも食べますか?」 「へ、え・・?あ、いや・・・」 しかし、有利の返事を聞く前に、コンラートはいつの間に奪ったのか、 チョコを一粒口に含み、ユーリへと口付けた。 「っ、ん・・」 小さなチョコが、絡み合うコンラートと有利の舌の間で溶けていく。 有利の腕はコンラートの背中に回され、服をきつく握っていた。 「ん、ん・・・っく」 唇を離すと、コンラートの舌を追うように有利の舌が唇から覗いた。 「ぁ、ふ・・」 「もっといります?」 「・・・っ、ばかっ!」 「いりませんか?」 「コンラッドの食べ方がやらしいのが、悪いんだっ」 「そうですか?・・で、どうします?」 にっこりと笑うコンラート。こんなとき、凄く意地悪だと思う。 「・・もっと、食べる・・ちょーだい?」 「いくらでも」 このチョコが、有利からコンラートへのプレゼントだと言うのはもう関係無い。 マーブルチョコが殆どなくなるまで、2人の食べさせっこは続いた。 その後、有利自身がコンラートの食べられたのは、言うまでもない。
恐れ多くも依々那さんのサイト(Dandelion。)より バレンタインフリーイラストを元に書かせて頂きました。 イラストへは文中のリンク、もしくは「貰い物」へどうぞ。 依々那さんのサイトへはリンク「相互」からも行けます。 戻