撮影






「はーい、じゃぁこれから撮影に入りまーす。陛下と閣下、準備お願いしますねー」

声がかかって、カメラマンとか、スタイリストさんとか、皆が動き出す。

もちろん、俺たちもだ。

「あ、はーい」

そう返事して、コンラッドに声をかけようとしたら。

「さ、行くぞ、ユーリ」

ヴォルフラムが俺の腕を取って引っ張った。

「って、は?え、なんで??どーしてヴォルフラム??」

「何だ、僕とじゃ不服だとでも言うのか!?」

「え・って、だって、俺コンラッドとだって聞いて・・・」

「すいません、陛下。急遽ヴォルフラムに変更に・・」

「陛下って言うなよ、名付け親!・・ってか、なんだよ。俺聞いてないぞ!」

「言っていないからな!」

「んな偉そうにいうなよっ!!」

「まーまー、渋谷。仕方ないよ。フォンビーレフェルト卿が、どーしてもって我侭いったんだから」

「なんだよー。ヴォルフラムの我侭かよ!」

「残念だったね、渋谷はウェラー卿がよかったのにねー」

「ば、なっ・・・余計なこと言わなくていいんだよ!!」

折角のコンラッドとの撮影で表紙だと思ってたのにー、とか考えてたら何処から表れたのか、
村田が俺の心のうちを読んでそんなことを言い出して、思わず真っ赤になってしまった。
ヴォルフラムは怒ったように眉をしかめ、それでも胸を張って言った。

「ふん!どっちにしろ、撮影は僕とだ。もう変更か無理だぞ!さぁユーリ、行くぞ!」

「ちょ、もー!折角のコンラッドとの仕事だと思ってたのにーっ」

「まぁまぁ、ユーリ。俺とはいつでも何でも出来ますから」
コンラッドは苦笑を浮かべて、俺にそう言った。

「うー・・・」

ってかさ、コンラッドー。知ってたなら教えてくれたってよかっただろ!

「ね?このままじゃ撮影スタッフに迷惑がかかるでしょう?」

コンラッドまで、困ったように言うから・・・。
確かに、俺の我侭で撮影をダメにするわけにもいかないし。
コンラッドを困らせたくない。

「・・・・わかったよ、仕方ないなぁ。さ、ヴォルフラム。さっさと撮影やっちゃおうぜー」

「なんだっ!そのやる気のなさはっ!!」

「やる気ならある、あります!」

コンラッドとじゃないなら、俺は早く撮影を終わらせてコンラッドとキャッチボールがやりたいんだ!
やる気満々だ。

「はーい、それじゃ撮影始めます!閣下。陛下に抱きつくように。あ、そんな感じで」

カメラマンの人がシャッターを切りながら色々と指示してくる。
調子に乗ったヴォルフラムが・・まぁ、指示だけど・・楽しそうに、後ろから俺に抱き付いてくる。
俺はその手に手を添えた。

「陛下ー、もっと笑ってください。自然に、自然にー」

自然に、笑顔・・。自然に・・・。

ちょうど、カメラの向こう側のコンラッドが見えた。
コンラッドが俺を見てくれてる。
にっこりと笑って手を振ってくれた。
やっぱり俺の恋人はカッコいいよなー。コンラッドだもんな!

「あ、そーです。いい感じです! はい、オッケーでーす!お疲れ様でした!」

コンラッドを見ている間に撮影は終わっていたらしい。
完成は雑誌が発売されたら分かるんだし、別に今見なくてもいっか。

「よし、コンラッド!野球しようぜ、野球!!」

「あ、こらユーリ!婚約者に対してなんだ、その態度はー!まて、ユーリぃ!!!」

俺はヴォルフラムの腕の中から逃れてコンラッドのところへ走っていった。

「渋谷、何時になくフォンビーレフェルト卿に辛く当たってない?」

「だって、コンラッドと撮影だと思ったんだよ」

俺の膨れたほっぺをコンラッドがつついた。

「拗ねてるんですか?」

「だってさぁ。全然聞いてなかったし!せっかく楽しみにしてたのにさ! 大体、コンラッドだっ
て教えてくれなかったんだから、悪いんだぞ!」

恨めしい目でコンラッドを見上げて睨んだ。
そんな俺に、コンラッドはすいません、と困ったような笑顔を浮かべる。

「ユーリ、ほら、機嫌直してください」

ちゅっと、唇にキスされた。

「・・ん、うん。へへ。コンラッド、行こうぜ!」

「はい、ユーリ」

キス1つで機嫌が直る俺は凄く現金な奴だと思う。
俺はコンラッドの腕を取って庭へ行こうと促す。

「はぁ、全く・・・。見せ付けてくれちゃって。ビーレフェルト卿も可哀相に」

村田の独り言に、俺は小さく舌を出した。
もちろん、後でちゃんと仲直りするけどさ。
ちょっとくらいの意地悪は許されてもいいだろう?






ユーリとヴォルフラムが表紙だったメージュを見て。 見た瞬間に思いついた(笑) ヴォルフラムファンの人、ゴメンなさい。 言っておきますが、私はヴォルフも大好きです。