ラブレター
ラブレターを、書いてみようと思ったんだ。
たまたま、コンラッドが女の人から手紙を貰ってるところをみて。
よくあることなんだろうけどさ。
それなら俺もコンラッドに手紙を書こうと思ったわけだ。
だけど、いざ書こうと思うと中々文章が浮かばない。
眞魔国の文字ではまともな文章が書けるとは思わない。
だって、俺の語学力は三歳児程度、いくら賢くても、所詮は三歳児。
日本語もわからないだろうし、そうなると、残るは英語だ。
俺は、英語だって苦手だ。
簡単な文章しかかけない。だけど、簡単な文章すら思い浮かばない。
一体何を書いたらいいんだ??
・・・・・考えてみたら、手紙なんて書いたことが無い。
いや、小学校のときに書かされたことある、か?
まぁ、そんなことどうでもいいか。
ラブレターなんて生まれて初めてだ。
俺は、羽ペンと紙を前にして頭を抱えた。
「どーしたの、渋谷?」
「っ、わぁ!村田っ!?ビックリしたー・・何時の間に・・・」
「ちゃんとノックしたんだけどねー」
「へ? あ、はは〜」
全然気付かなかった。
「で?何してるの?・・・手紙?」
村田が俺の手元を覗き込んで聞いてきた。
「あぁ、うん・・・まぁ・・・」
「Dear Konrad へぇ、ウェラー卿宛てかぁ」
「わぁ!バカ、見るなっ」
「って、まだ名前しか書いてないじゃない」
「うぅ・・・」
ばれたものは仕方ない。
俺は村田に相談する事にした。
「へぇ。ウェラー卿にラブレターねぇ」
「ぅ・・・・。でも、何かいていいか・・・」
からかうように笑いならがら村田がそう言う。
すっごく、はずかしい。
「別に、そんな難しく考えなくても。自分の気持ちを素直に書けばいいんだよ」
「素直に・・俺の気持ち・・・」
「そーそー」
「うぅうう〜〜ん・・・」
「そんなに悩むこと?」
「だって・・・」
俺のコンラッドへの素直な気持ちだろ・・・?
んっと、ありがとう、だろ?お疲れさま、だろ?
あと、カッコいいとか、優しいとか、我慢してるんじゃないかとか、体とか、むちゃしてないかとか心配で・・・。
いつも傍にいて欲しいとか、俺に触れてくる大きな手が好きだとか。あ、指も好きだ。
それに抱きしめてくれる逞しい腕とか、大きな胸も好き。
俺を呼んで、話し掛けてくれる声が好きだ。
俺を見る目が好きだ。綺麗な目。優しくって、柔らかくって。いっつも俺を見てくれてる。
コンラッドの笑った顔が好きだ。俺を見て、優しく微笑んでくれる。
稽古をつけている時のカッコいい顔とか、汗を拭う仕草とか、余裕の無い顔とか、
ちょっとはにかんだような、困ったような笑顔とか。
怒った顔も好き。ヨザックとふざけてる時のコンラッドも好き。
ベッドの中での、仕草とか、俺を気遣う声とか目とか、息を詰めるときの顔とか、
気持ちよさ草にしてるところとか。漏れる声とか・・・。
戦ってる時のコンラッドもカッコいいけど、悲しい。
寂しい顔をされたり、戦ってるコンラッドを見るのはとても寂しい。
俺のためにコンラッドが傷つくのは嫌だ。・・・これは、コンラッドだけじゃなくてみんなだけど。
「っ・・・」
俺は考えて真っ赤になってしまった。
村田がおかしそうに笑ってる。
こんな、こんな恥ずかしいこと書けるかーっ!!!!
無理無理、絶対無理。
「しぶや・・くくっ、いや、何を考えてたかなんて訊こうとも思わないけど。
君のその気持ちを一言で表すとどうなる?それだけでいいんだよ、単純でいいんだ」
村田は、頑張ってね、とまだ笑いながら俺に言って、部屋を出て行った。
「単純に、一言で・・・か」
それなら、決まっている。
単純で、わかりやすいくらい、簡単な言葉だ。
つまり、どんなことを考えたって、その根本は変えられない。
だって、嫌いなところなんて一つも無いんだ。
俺は英語で一言サラっと書くと、それを封筒に入れて、ちゃんと封もして、部屋を飛び出した。
「コンラッド!」
「陛下?」
コンラッドはすぐに見つけることが出来た。
俺はコンラッドのとこまで走って、上がった息を整えてからコンラッドを見上げた。
「陛下言うな、名付け親!」
「すいません、ユーリ。そんなに急いで、なにかありました?」
「んーん、何も無いよ。コンラッドのところに来たかっただけ」
そういうと、少し驚いたようだったけど、コンラッドはにっこりと微笑んだ。
「そうですか。 俺も、ちょうどあなたのところに行こうと思っていたところです」
「そっか、へへ」
「どうしたんです?嬉しそうですね。いいことでもありました?」
「ん?うん! ほら。今、あんたに会えた」
「ユーリ・・?」
コンラッドが不思議そうに俺を見てる。
確かに、今の俺はちょっと変かも。
なんだろう・・・ドキドキしてテンション上がってんのかな?
「あのな、コンラッド」
「はい」
「これ、はい」
俺は手紙をコンラッドに差し出した。
「え、ユーリ?」
「おれから、コンラッドへ」
「ユーリから俺に?嬉しいな。なんの手紙ですか」
「見てからのお楽しみ!あ、あ、一人で見ろよ!俺の前で見るのも禁止っ!絶対、一人でだからなっ」
俺の目の前で手紙を開封しようとしているコンラッドを慌てて制して、釘を刺した。
「そうですか・・・。わかりました。後でゆっくり読ませてもらいます」
「うん。んっと、じゃな!俺、仕事そっちのけだったんだぁ。また後でな!」
俺はそう言ってまたもと来た道を走りだした。
残されたコンラッドはユーリから貰ったばかりの手紙を見つめていた。
一体、どんな内容の手紙を書いてくれたのか・・・。 楽しみだな。
コンラッドは一人微笑んで、ユーリとの約束どおり一人で読むため、自室への足を向けた。
その手紙を見て、幸せそうな笑みを浮かべたコンラッドが、夜、ユーリの部屋に忍び込んだのは、
また別の話。
「
Dear Konrad
I love you.
Your yuri
」
大好きなコンラッドへ。
俺は、あんたを愛してるよ。
ユーリより。
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