「コンラッド!これこれ、これは何?」
「あぁ、これはりんご飴のようなものですよ。果物を飴で固めているんです。とは言っても、
この飴は柔らかいですが」
「へぇ?これ欲しいな。あ、あっち!あれってやきそば?あれも食べたい!」
そう言って、有利がそちらに走っていく。
「あ、ユーリ、待ってください!一人で行動しないで。 あ、これを一つもらえるか?」
「はい、閣下。一つ、オマケしておきます。どうぞ、陛下に」
「有難う、喜ぶよ」
コンラッドはお金を渡し商品を貰った。
「コンラッド―!」
「今行きます。待ってください、ユーリ!」
有難う、とその店の若い女・・と言っても60代だが・・に礼を言って、
コンラッドは急いで有利の元へ向かった。
「あまり食べると、夕飯が食べれなくなりますよ?
今日は、コックが皆腕によりをかけてご馳走を用意しているはずです」
「大丈夫!ちゃんと食べるよ!でも・・これくらいにしておこうかな?
あーあ、もっとお祭り楽しみたいなぁ」
水あめのように柔らかくて甘い飴でコーティングされているりんご飴もどきを食べながら、
有利はそう言った。他にはヤキソバやイカ焼きがある。荷物持ちはコンラッドだ。
「あ、はい、コンラッドも食べてよ。おいしいよ、この飴」
はいっと、コンラッドに差し出す。
「ですが手が塞がってるから。ユーリが食べていいよ」
「えー?折角だからコンラッドも食べてよ。はい、あーん」
「ありがとう、ユーリ」
口元に差し出された飴を、コンラッドは口に入れた。
「な、おいしいだろ?」
「えぇ」
口に入れたままでは上手く喋れないので、コンラッドはニッコリと笑って頷いた。
噛むと果物の甘さと飴の甘さが混ざってとても美味しかった。
すぐに食べてしまったコンラッドはゴミ箱に棒を捨てるとユーリに言った。
「さて、ユーリ。そろそろ城に戻りましょう。夜のパーティーの支度がありますからね」
「えー、もう帰るのかぁ・・・」
「城でもユーリを祝いたくてみんな待っていますよ。嫌ですか?」
「う・・、分かってるよ。ごめん・・帰ろう、コンラッド」
「みんな、ユーリが好きなんです」
「わかってる、よくわかってるよ。だから、嬉しくないわけじゃないんだよ。
ただ、ちょっと緊張しちゃうって言うか。もっと軽―いお祝いでいいんだよ。
家族だけでテーブル囲んで、ちょっと豪華な食事とケーキがあって、
歌うたってロウソク吹き消して・・そんなんでいいんだ。
おっき過ぎて、ちょっと戸惑ってるだけ・・」
「えぇ、わかってますよ」
コンラッドの優しい笑みに、有利はほぅっと息を吐いた。
「さ、帰ろう。コンラッド!一応、俺の誕生日パーティーだもんな。
俺がいないと始まらない、だろ?」
「えぇ、帰りましょう」
城は豪華に飾られていた。
有利は、片付け大変だろうなーなんて他人事のように思いながら、有利は自室に向かった。
色々忙しそうに動き回る人たちに会釈をしながら、廊下を歩く。
ヴォルフラムやギュンターも準備に忙しいらしい。会わなかった。
ほっと胸を撫で下ろしたのは、秘密だ。
「やぁ、渋谷。お祭りは楽しかったかい?」
広い自分の部屋に入ると、そこにいたのは大賢者な親友の村田健。
「村田!なんで此処にいんの?」
「そりゃ、魔王陛下の誕生日だもの。僕だって居るさ。やー得だね、渋谷。国でも家でも祝って貰えて」
「なんか、一気に二つ年取る気がしてきた・・・」
「あはは。まぁまぁ、早く着替えないと、フォンビーレフェルト卿が怒って乗り込んでくるよ?」
「げっ。それは勘弁。ってか、俺っていつもの学ランじゃダメなの?」
「結構ですよ。あれが最高の服装だ。 あぁ、着替える前に風呂に入ってください。
上がったら、侍女たちが色々やってくれます」
「はーい」
有利を風呂に見送って、侍女たちに任せる。
「では、俺も自分の支度をしてきます。それでは猊下、失礼します」
「うん。あ、ちゃんと渋谷のこと、迎えにきてよ?」
「言われなくても、誰にも譲りません」
そう言ってコンラッドは有利の部屋を出て行った。
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