俺、渋谷有利16歳。職業魔王。 このたび彼氏が出来ました。 ・・・まぁ、深く突っ込まないで欲しいんだけど。 子供も産めないで親不孝、なんてことにはならない。 だって、俺には可愛い養娘がいるんだから。 モテないモテないと嘆いてきた16年間。 やっと終止符が打たれたんだけど。 人生初のお付き合い。 どうすればいいのか、さっぱりわからない。 おつきあい 「おはようございます、陛下」 「・・・・はよ・・、コンラッド・・・」 「走りに行きますよ」 「んー・・・、ぅん」 いつもどおりの朝。 優しい声に起こされて目をあけると爽やかな笑顔。 思わず嬉しくて笑顔が浮かんでしまう。 ・・・俺だけかな。 頭がボーっとしたまま、ベッドの上に起き上がる。 明けられたカーテンから差し込む朝日が眩しくて、おかげで目が覚めた。 「おはようございます、陛下」 「陛下じゃないだろ、名付け親」 「そうでした、ユーリ」 最近、コンラッドはわざと陛下って呼んでるんじゃないかって思うんだけど。 本人はそんなことないって言うけどさ、怪しい。 俺はベッドから抜け出して顔を洗って歯も磨いて、ジャージに着替えた。 外に出ると気持ちよくて。 朝早いせいか、日中の暑さは全く無い。 「さてっと、いくか!」 「はい」 走りながら、後ろから丁度いい距離を保ってついてくるコンラッドを感じて思わず笑みが浮かぶ。 そして、少しドキドキする心臓を走ってるせいだと誤魔化す。 起きたとき、本当はどうしようかと思った。 寝惚けてたせいで、あんまり態度には出なかったけど。 それに、コンラッドがいつも通りだったから俺も普通に出来たけど。 付き合い始めたのは、昨日。 ・・・お互いの気持ちは、はっきりしてたんだけど。 って言うか。 俺自身より早くコンラッドとか村田とかが俺の気持ちに気づいて。 自覚させられて。 戸惑ってた俺をコンラッドはずっと待っててくれてた。 それで、晴れて付き合うことになったんだけど・・・。 自慢じゃないが俺はモテない。 つまり、お付き合いをしたことが無い。 女の子と。当然だけど、男とも。 だから、実は内心どうしたらいいのか凄く困ってるんだけど・・・。 一緒に出かけて、一緒に遊んで、朝起きてから夜寝るまでずっと一緒。 付き合うって何が変わるのかなって思ってたけど、全然今まで通りでいいんだって安心してたりして。 ・・・村田に言ったら呆れられたけど。 なんて考えながら走ってるうちにいつもの中間地点に着いたみたいで、 コンラッドに呼び止められるまで気づかなかった。 「今日はなんだか余裕ですね」 「そう、かな?」 少し上がった息を整える。 「調子がよさそうですよ。ペースもいつもより速い」 「んー、そうかも。なんか、気分いいんだ」 「慣れてきたのかもしれませんね。次から距離を少し伸ばしてみますか?」 「んー。いや、いいよ。ノンストップでココと城を行き来できるようになってからにする」 初夏の風を感じながら、俺が寝転がる。 隣にコンラッドが座った。 「気持ちいーなー」 「そうですね」 コンラッドを見上げながら言ったら、コンラッドがニッコリ笑ってくれた。 静かに。風が流れる。今日は過ごしやすくなりそうだ。 今日は特に何を話すでもなく。ただ時間が流れていく。 けれど、心地いい。 気が置けない関係がとても、心地いい。 「さてっと。休憩終わり!そろそろ行こうか、コンラッド」 言いながら、俺は勢いをつけて起き上がった。 コンラッドも立ち上がる。 「はい。あ、ユーリ」 「ん?」 呼び止められて、振り向く。と・・。 「・・・・・・・」 何が起こったのか、わからなかった。 今、いま・・・? 「・・・・・・・っな、なにっ!?」 ぶぁっと顔が熱をもつ。 あぁ、きっと俺の顔は真っ赤だ。 だって、今・・何された?俺・・何された??? 「なにって・・キスですが。嫌でしたか?」 「え、えぇ???キス、き・・すって・・・な、何でっ」 「なんでって、ダメですか?恋人に、キスしたいと思ったら」 「え、いや。うん。いいと思うよ?恋人だもんな!」 「ユーリ。ご自分のことですよ?大丈夫?人事みたいに言ってるけど」 「ぅえ!?ま、まって、まって。コンラッド!ちょ、ちょっと落ち着くからっ!!」 しかし一向に落ち着けない。 「ほら、ユーリ。深呼吸して」 そっとコンラッドが背中を撫でてくれる。 すーはーすーはーすーはー・・・ 「落ち着きました?」 「うん、ゴメン・・・」 「俺のほうこそ、すいません。驚かせたみたいで」 「あ、うん・・。いや・・・」 そうだった。コンラッドにキス・・されたんだ、俺。 改めて思い出して、再び熱が上がってくる。 そんな俺を見て、コンラッドが苦笑するのがわかった。 「嫌だった?」 「ぇ?」 「キス。されるの嫌でしたか?」 「・・・・・いやじゃないよ・・・」 ビックリしただけで。まさかされるなんて思ってなかったから。 そうだよな、キスされたんだ。そういえば、ファーストキスだ。 そういうと、今度は困ったような笑顔。 「キスだけでこんなになるなら、当分先には進めないかな」 「へ?」 「腰を抜かされなくてよかったけどね」 「コンラ、ッド?」 首をかしげると、コンラッドが抱きしめてきた。 「ユーリは、抱きしめられるのは平気なんですね」 「え、だって。抱き留められたり抱きしめられたり、結構するじゃん」 「・・・もう少し、意識して欲しいかな。俺のこと」 「え、どういう・・・」 「ユーリ。俺たち、付き合ってる・・っていうのは、忘れてないよね?」 「あ、たり前だろっ」 「よかった」 「それより、先、ってなに?」 「過剰なスキンシップとか」 「は?」 「キスとか、セックスとか」 「なっ」 「当分は、無理そうだけど。慣れていってくれると、嬉しいかな」 そうか、付き合ってるってそういうことか! 真っ赤になった俺にコンラッドがくすくすと笑って。 再びキスしてきた。今度は唇じゃなくて、おでこに。 「コンラ・・・」 「行きましょうか。遅くなるとみんなうるさいから」 「あ、うん・・」 前をコンラッドが走り出す。 俺はついていく。 だけど、コンラッドがちゃんと俺のことを考えながら走ってくれてるのがわかって嬉しくなって。 でも、そうか・・。 例えば手をつないでデートしたりとか。 キスしたり、抱き合ったり。その、エッチ・・とかも。 付き合ってるなら、当たり前のこと、なのかな・・・。 きっと、コンラッドは待ってくれる。俺が、受け入れられるまで。 だけど、それって・・ちょっと違う気がして。 だって俺だってコンラッドが好きなんだし。 ドンっとぶつかって止まった。 「着きましたよ?また、考え事しながら走ってたんですか?」 「え、あ・・。」 底は城の前で。 「ご、ごめん、コンラッド・・・」 「いえ。平気ですか?」 「うん、大丈夫だよ」 「では、着替えて食事に行きましょうか」 「おう!あ、コンラッド!」 「なんですか?」 俺は手を伸ばして、コンラッドの襟首を掴んで引き寄せ、勢い任せにキスをした。 「!」 キスとは呼べないような代物だけど。 ただぶつかっただけのキス。 でも、今の俺にはこれが精一杯。 「ユーリ・・・」 「俺も、コンラッドが好きだから!だから、その・・・頑張るからっ!」 恋愛もへなちょこな俺だけど。 早く慣れるように。貴方に応えられるように。 「ありがとうございます、ユーリ」 「さ、さっさと行くぞ!」 コンラッドから離れて駆け足気味で部屋に戻る。 その顔は自然に笑ってしまう。恥ずかしいけど。 ちゃんとコンラッドがついてきてるのがわかるから。 その顔が、笑っていることも。
なんだか、長くて私らしくない書き方、かも?? ムダに長いしね。 そのうち、訂正削除書き直しするかも・・・ 戻