七夕
「な、コンラッド。こっちには七夕ないのか?」
「なたばた・・・あぁ、七夕。」
「ってことはないんだ?」
「そうですね。したいですか、七夕」
「え?いや。したくないワケじゃないけど。」
「ならやりましょう」
「え?」
コンラッドがにっこりと笑った。
*
「で、七夕パーティー?」
「はい。笹がないので似た木で代用ですが」
「すげー。あー、でもなんか悪くないか?俺達だけで盛り上がって…」
「では、城下にもおきましょうか。木。短冊も一緒に。」
「ほんと!?」
「えぇ。それで七夕の説明をすれば、、みんな喜んで参加してくれますよ」
「そっか。ありがと、コンラッド!」
「どういたしまして。では俺達も書きますか、願い事」
「うん!」
*
木は庭においてるというから、コンラッドと一緒に向かっているとき。
「ユーリ!」
呼ばれて振り向けば、そこには愛娘の姿。
「グレタ!」
走って飛び付いてくる娘を抱きとめる。
「おかえり、グレタ。」
「ただいま!」
「ちょうどいいとこに帰って来たね。グレタも七夕しよう?」
「たなばた?」
「そう。この短冊にお願い事を書いて木に結ぶんだよ」
「グレタもやる!」
城の庭に大きな木を何本も立て、兵隊さんたちも皆を巻き込んでの七夕だった。
みんな並んで短冊を結んでいる。
一番に結んだユーリは部屋の窓からその様子を嬉しそうに見ていた。
「大盛況ですね」
「うん、よかった」
「城下も賑わってるみたいですよ」
「そっか!行きたかったなー」
残念そうに言うユーリにコンラッドが苦笑する。
仕事が終わってないのだから、とグウェンダルだ許してくれなかった。
今ユーリが部屋にいるのもそのためだ。
ホントはもっと皆と騒ぎたかったのに。
「陛下は、」
「陛下じゃないだろ」
「すいません。ユーリはなんて書いたんですか?」
「ないしょ!コンラッドは?あ、でも願い事は人に言うと叶わないんだっけ?」
「そうなんですか?じゃ、俺も秘密だな」
「ちぇっ」
コンラッドが後ろからユーリを抱きしめる。
ユーリはコンラッドの胸に背中を預ける。
そして、
「・・・、コンラッドには特別に教えてやる」
「え?」
コンラッドを見上げてユーリが口を開く。
その言葉にコンラッドは笑みを深くし、じゃぁ、俺も。とユーリの耳元に唇を寄せた。
囁かれた言葉にユーリは真っ赤になる。
そんなユーリにコンラッドはくすくすと笑う。
赤い顔で睨みあげるユーリの唇をそっとなぞり。
上から降りて来た唇に、ユーリは目を閉じた。
日記に書いた七夕小説です。
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