眠れない夜は。
        



ぎしっとベッドが軋んだ。

「コンラッド・・」

耳元で聞こえた声に、コンラッドは慌てて目を覚ます。

「・・・ぇ、陛下!?」

目に入ってきたのは黒い髪、黒い目。
魔王陛下・渋谷有利その人。
うかつだった・・・。
ユーリだろうと人が部屋に入ってきたのに意識が浮上しなかったなんて。
コンラッドは慌てて身体を起した。

「どうしんたんです、陛下」
「・・・陛下ゆーな・・・」
「すいません。で、ユーリ?どうしたんですか?」

聞くと有利は言おうかどうか迷っているようで、顔を俯けてしまった。

「ユーリ」

促すように、コンラッドが優しく声をかける。
すると、小さな声が聞こえた。

「・・・寝れない」
「え?」
「・・・ごめんな。疲れてるのに、起こしたりして・・・。
 ホントは起こさないようにしようと思ったんだけど・・・」

しょぼんと俯きながら言う有利にコンラッドが微笑む。

「起こしてくれてありがとう、ユーリ」
「へ?」

コンラッドからのお礼の言葉に、有利が顔を上げる。
首を傾げ少し潤んだ目でコンラッドを見上げてきた。
コンラッドは内心クラクラだ。

「なんで、ありがと・・・?」
「だって、起こしてくれたでしょう?それが嬉しいんです」
「なんで・・・。メーワクじゃないの?」
「とんでもない。嬉しいですよ。貴方の眠れないときに、俺を頼ってきてくれたこととか。
 一緒に過ごさせてくれることが。・・・俺には遠慮しないでください?」

そういって、コンラッドはユーリを抱き寄せた。

「コンラッド・・・」
「眠れなくて、俺を頼ってきてくれたんでしょう?」

いいながら有利の頭を優しく撫でる。

「コンラ、ッド・・・」

うっとりと目を閉じた有利の唇にそっとキスをして。

「・・っ」

有利は恥ずかしそうに赤くなったけれど、決して嫌がる素振りは無く。
コンラッドの腕の中で気持ちよさそうにしていた。
そんなユーリに何度か優しいキスを贈り、さらっとした黒髪を撫でた。


しばらくすると、コンラッドの腕の中から小さな寝息が聞こえてきた。
自然と、笑みが浮かぶ。なんて可愛い恋人だろう。

「おやすみなさい、ユーリ」

そうしてまた、キスを1つ。

コンラッドは有利を抱きしめたまま横になり、腕の中のぬくもりと重みに幸せを感じながら、
再び自分も眠りについた。