言葉には、力があると思うんだ。 言葉 「ねぇ。蛮ちゃん・・・、俺のこと好き?」 「は?」 「ねぇ、好き・・・?」 唐突に、銀次がそう聞いてきた。 「しらねーよ」 「蛮ちゃーん、言ってよ、ねぇ・・・」 好きだとか、愛してるだとか、んな木っ端ずかしいこと言えるかっての。 「蛮ちゃんと付き合ってるけど、俺・・蛮ちゃんから好きだって言われたこと無いもん」 「そーだっけか?」 「だから言ってよー」 「言わなきゃわかんねーのかよ」 「わかんない!!って言うか、わかってても言って欲しいもんなのー!!」 諦める気は無いらしい。 どうするか・・・。 俺は煙草を吸い込んで、吐き出した。 言葉には、力があると思う。 だから、簡単に気持ちを口にするなんて出来ない。 だから、告白という行為は勇気を伴うのだろう。 声に出せば取り消せない。 後戻りできない。 欺瞞に満ちたこの世の中で、愛を囁くことほど、滑稽なことはないと思っていた。 信じるのは憎しみだけだった。憎しみの中で育ったから。 愛は、わかりにくい。 だから、言葉を求めるのか・・? 銀次は、いつもいつも俺を好きだと言ってくる。 それこそ、何の打算も無く。見返りも求めず。 ただ真っ直ぐに、俺を好きだと言う。 唯一、信じられるもの。 横から痛いくらいの銀次の視線を感じる。 思い返せば、確かに言ってないかもしれない。 でもヤッテル最中は言ってねーか・・・? 「蛮ちゃん・・お願い。言って・・・?」 ま。コイツも最中はいっぱいいっぱいでなに言われてるかなんてわかんねーか。 短くなった煙草を、灰皿でもみ消した。 「いっぺんしか言わねーかんな」 たまにはいいだろう、甘やかしてやっても。 期待に満ちた顔で俺を見てくる銀次に顔を近づける。 耳元で、囁いた。 「愛してんぜ、銀次」
久々に蛮銀を書いた。 なんだか、変な話になってしまった。 好きな気持ちを信じるのは難しいから。 愛の言葉も大事ですよって話。 戻