言って。





「ねー、蛮ちゃん。好きって言って?」
「イヤだ」
「なんでー!」


さっきからこの繰り返し。
ホンキートンクの定位置のカウンターでずっと繰り返されるやりとり。


「蛮ちゃんのケチ」
「言ってくれたって、いいじゃんか」
「何で、んな事言わなきゃなんねーんだよ」
「聞きたいから!だって、一度しか、聞いたことない!!」
「夜はいつも言ってやってるだろうが」
「なっ、ぅ。そう言うときじゃなくって!普通に言って欲しいの!」

だって、そういうコトしてるときって・・。
いっぱいいっぱいで。だから・・。

ノロケか、痴話喧嘩か。
カウンターの中のポールはもうため息をつくしかなかった。

「俺、毎日言ってんのに・・・」
「んじゃお前も言わなきゃいーだろ」
「やだ。我慢できない」
「なら言えば」
「なんで、蛮ちゃんは言ってくれないのさ」
「なんでも」
「なんだよ、それー!・・・俺のこと、好きじゃないんだ・・・」
「ばーか」

蛮ちゃんは煙草を灰皿に押し付けて消して、席を立った。

「行くぞ、銀次!」
「え?あ、待ってよ、蛮ちゃん!!」

出て行く蛮ちゃんの背中を追いかけた。








「蛮ちゃんってば。ねー・・。言ってよ、蛮ちゃんー」
「あのな・・・」

いい加減うざったそうに蛮ちゃんが振り向いた。
う・・・。だけどさ。聞きたいんだもん。

「何でそんなに聞きてーの。信じらんねーのか?」
「・・・違うよ。ただ、聞きたいだけ」

うつむいた俺に、ため息をつく蛮ちゃん。

「あのな、お前は嘘がヘタなんだから、すぐバレる様な嘘ついてんじゃねーよ」
「だって・・・」
「俺は軽々しく、口にしねーんだよ。その気持ちが本物なら、なおさらな」

新しい煙草に火をつけながら、蛮ちゃんが言う。

それって・・?

「別にお前がそうだってわけじゃねーけど」
「??」
「ありがたみが無くなるだろ。言われたときに」
「そんなこと、ないよ」

そんなの、じゃぁ・・俺が好きって言うの、蛮ちゃんは嬉しくないの?

そう聞いたら、

「あのな、だからお前のがそうだとは言わねぇって言っただろうが」

よくわかんないよ、蛮ちゃん。
つまりどういうこと?

よくわかりません。って顔をしてたんだろう。
蛮ちゃんが呆れた顔をしてた。

「あー。お前に伝わるとは思ってねぇけどよ」
「なんだよ、もー!」
「つまりだな」

そっと、顔が近づいてきて。
耳元で。

「俺のが、お前に惚れてるってことだよ」


そう言った蛮ちゃんにビックリした。

ビックリしすぎて固まってる俺に、ニッと笑って。
それはとてもカッコいいと思った。
蛮ちゃんは、そのまま歩いていっちゃって。
俺は、赤くなった顔を、どうすることも出来ない。
だけど、泣いちゃいそうなほど嬉しくて。
蛮ちゃんが、俺を好きだって・・・。
蛮ちゃんが言ってたことが少しわかったかもしれない。

だけど。
えっと、つまり、俺より蛮ちゃんのほうが気持ちが大きいってこと?

そんなの。それは納得いかない。

「蛮ちゃん、待ってよ!」

抗議するために、俺は蛮ちゃんを追いかけた。





再びご無沙汰名蛮銀。 だってね、ネタがね・・(汗) すいません、私蛮ちゃんファンなもので(笑) ってか、まだ手を出してないんだね、蛮ちゃん。 付き合ってはいるんだね。