不安なくらい好きだから 三年の先輩達が卒業して、もぅ数カ月がたとうとしている。 前までは変わらずテニス部に顔を出していた先輩たちも滅多に来なくなっていた。 一年だったリョーマ達には後輩ができた。 いつも一緒にいる元・一年トリオたちは先輩と言う立場に慣れないらしい。 リョーマにとって、そんなことはどうでもいいのだ。 テニスだけで見るなら大人でさえ見下ろせてしまうリョーマだ。 後輩が何人出来たって気にもならない。 そんなことより(リョーマにとっては)ずっと深刻な問題があるのだ。 それは自分の恋人のこと。 高校に進学した先輩たちが顔を見せられない、と言うことはつまり。 リョーマの恋人である菊丸英二もその例に漏れず。 新しい生活でいっぱいいっぱいらしく、ここのところ会うどころか電話で話すらしていないのだ。 始めのころは平気だったのに、最近は欲求不満が募るばかり。 「はぁ〜…」 部員が挨拶をしながら帰って行く部室で。 リョーマは一人、椅子に座ってため息をついていた。 「越前。ため息なんかついてどーした?」 「桃先輩…」 見下ろしてくる桃を見上げる。 「みんな、帰っちまったぞ?」 人指し指に引っ掛けた鍵をくるくると回しながら桃が言う。 「あ、すんません。帰ります」 そう言って、まだ自分が着替えていないことに気付いた。 「急いで着替えるんで…」 「気にすんなよ」 今までリョーマが座っていたところに桃が座る。 残っていた部員もいなくなり二人きりになる。 「高校になるとマネージャーもいるしなぁ…」 不意に桃が話し出した。 「高等部と言ってもココとは校舎も離れてるし、高校生って言うとなんか大人な感じだし、 先輩たちモテるしなぁ。彼女くらい出来てるんじゃねーかなぁ。浮気してもバレないし。」 「っ、英二先輩はそんなことしない!」 「誰もえーじ先輩なんて言ってねーよ」 「あっ…」 慌てて口を塞ぐが手遅れだ。 かぁぁっと顔が赤くなる。 「まぁ、普段憎たらしいくらい生意気なおめーに、ンな顔させられんのはえーじ先輩くらいだろうよ。」 「…何が言いたいんスか?」 「たまには、お前の方から会いに行ってみたらいーんじゃねーの?」 「え?」 「待ってるだけなんて、らしくねーなぁ、らしくねーよ」 一人頷いている桃を見る。 確かに、その通りかもしれない…。 「ありがとーございまず。」 「気にすんなって」 リョーマはテニスバッグを肩に担いだ。 「俺、行ってきます。高等部」 「おー、行ってこい。」 リョーマは桃に軽く会釈すると、走って部室を後にした。 そんなリョーマを見送った桃城は一人ため息をつき苦笑を浮かべた。 「まったく。やってらんねーな」 早くしないと帰ってしまうかもしれない。 リョーマは急いで高等部に向かった。 高等部の制服はブレザーだから、学ランのリョーマはどうしたって中学生にしか見えなくて、 校門前にいるとなんだか居心地が悪かった。 たまたま出て来た高校生に聞いたらテニス部はまだ練習していたと言うから、 リョーマはそのまま門のところで待つことにした。 大して時間も立たないうちにテニスバッグを担いだ男子が出てき始めた。 見たところ二年か三年だろう。 珍しそうに見られているのがわかって、なんだか気分が悪い。 しばらくして、知ってる顔がまじってきた。 どうやら、一年も帰り始めたようだ。 驚いたようにこちらを見る顔見知りの先輩達に軽く会釈する。しかしなかなか英二は出てこない。 リョーマは一々挨拶をするのもめんどくさくなって地面に顔を落とした。 その時… 「越前…?」 懐かしいその声に呼ばれて顔上げると、そこにいたのば手塚だった。 「部長…」 「もう部長ではない。…あぁ、菊丸を待っているのか」 「…まぁ。」 手塚の恰好を見る。 ブレザーを着こなしてる姿はとてもじゃないが高校生には見えない。 「何か言いたそうだな?」 「いえ…」 きっと不二達にもさんざん言われたんだろう。 「菊丸なら部室で不二達と話していた。もうすぐくるだろう」 「そーですか。」 「え、おチビ?」 自分のことを おチビ と呼ぶのは一人しかいない。 久しぶりに耳にしたその呼び方なんだか胸が熱くなった。 「英二先輩…」 振り返ったそこにいたのは、やっぱり自分が会いたかった人。 「越前くん、久しぶりだね」 「っス、不二先輩。…大石先輩も。」 「あぁ、久しぶりだな。越前」 英二と一緒にいた不二と大石に頭を下げる。 「越前は菊丸に用があるそうだ」 「ちょ、ぶちょ…手塚先輩!」 手塚のセリフに慌ててしまう。 菊丸は目の前にいるのに、まだまともに顔すら見ていないのだ。 慌てるリョーマを見て、不二がクスッと笑った。 「そーいうこと。なら、俺達はお邪魔だね。帰ろうか、手塚。大石」 「あぁ、そうだな」 「ではな、越前。」 「またな、越前」 二人とも不二の言葉に頷くと、それぞれ挨拶を残してさっさと帰って行ってしまった。 よくわからない空気が流れる。 先に口を開いたのは英二だった。 「俺に用だって?」 「え、あ…。別に、用があったわけじゃないんスけど……。」 再び沈黙。 リョーマの顔はうつむき気味だ。 「ここだと目立つから、移動しよっか」 「はい。」 英二が歩き出す。 それについて歩く。 変わらず、会話はなかった。 「ほい、おチビ」 「あ、ドモ。」 差し出された缶を受けとる。 暖かいミルクティーだった。 ついた場所はよく知ってる公園で。 二人は並んでベンチに腰掛けた。 「んで?」 「え?」 「え、じゃないっしょ?俺に用があって来たのはおチビの方じゃん」 まぁ、その通りなんだけど。 「…めーわくでした?」 「んにゃ、別に。んなことないけど?」 英二先輩の反応を見てると、なんだか…。 「…めーわくです?俺…」 なんだかとっても、投げやりで。 「だから、そんなことないってば」 どーでもよさそうに聞こえるのは、気のせい…? 「別れたいとか思ってる?」 「へ?」 「理由がないと会いに来ちゃダメなわけ?」 「…おチビ?」 「俺は先輩のなにっ!?」 「ちょ、落ち着けって…」 「中学時代の思い出作り?近くにいた都合のいい道具っ!?」 「リョーマっ!!」 ヒートアップして行くリョーマの最後の言葉に、英二は声を荒げて制した。 「っ…」 思わず息を飲んで黙る。 だって、仕方なかった。 桃の言っていたセリフが渦巻いていて。 今までごまかしてきた不安が溢れ出てきて。 嫌になるくらい弱くなっている心に自己嫌悪してしまうくらいだ。 こんなことなら好きになるんじゃなかった、と。 そんなことを思ってしまうくらい、英二が・・・好きで・・・。 「…泣くなよー、おチビ」 困ったように英二が呟く。 自分が泣いていることに気付く。 こんなに弱い自分は嫌だ。 腕でゴシゴシと目元を拭う。 「泣くなって。リョーマ」 やんわりと抱き寄せられる。 久々に感じた英二の温もりに身を委ねてしまいそうになる。 「…めーわくなんじゃ、なかったんスか…」 「誰も、そんなこと言ってないだろ?」 「…俺は…」 「おチビは、俺の恋人。たった一人の」 「…、そんなの…」 「不安にさせた。ごめんな?」「……浮気とかしてない?」 「するわけないって!」 「これからも?」 「とーぜん」 「俺のこと好き?」 英二に抱き締められたままゆっくりと顔を上げて問い掛ける。 「当たり前でしょ。好きだよ、リョーマ」 英二の腕の中で向けられたリョーマの顔に、英二の顔が近づいていく。 ゆるりと瞼が下ろされる。 完全に閉じ切るのと同時に、唇が重ねられた。
■言い訳■ ケータイサイトで書いたもの。 なんつーか。携帯で書くの苦手です。 文章が支離滅裂になる。 修正する気も起きないのでそのまま載せますが(爆) いろんな意味で中途半端! 無駄に長いし。 意味が通じてるかどうかも微妙です(汗) …ごめんなさい(逃) 戻