風邪〜前編〜



「ゴホっ!ゴホっ!!」

朝、なんとなく息苦しくっていつもよりも早く起きた。
セキがひどく頭がボーっとしている。
体が異常に熱くて、汗ばんでいる。
これは、もしかしなくても風邪の症状。
母親に体温計を渡されて計ってみるとなんと、38.6度。

「学校に電話しておくから。今日は学校、お休みね。」

そういって部屋を出て行った母親。
リョーマは何も言う気になれず、再び眠りについた。
部活のことと、大好きな先輩のことを考えながら・・・。







「今日、おチビちゃん、どーして部活に来なかったんだろう?」

朝練のあと。部室で着替えながら菊丸が独り言のようにつぶやいた。
いつも朝練には遅れてくるがサボったことは一度だってない。
なんたって、部活をしに学校に来ているような奴だから・・・。
菊丸の疑問はもっともなことで。
そんな菊丸に不二は言葉を返す。

「そー言えば、今日は来なかったね。寝坊なんじゃないの?ねぇ、桃。何かしらない?」

「さぁ。俺、今日は越前のトコに寄ってきてないから・・・」

そのとき、部室のドアが開いて、手塚、大石が入ってくる。

「あ!大石ぃ!!。おチビちゃんって、なんで今日は朝練来なかったの〜?なんか知らない?」

そう言って泣きついてくる菊丸に大石は苦笑した。
この事を聞いたら、菊丸はどんな反応をするんだろう?
まぁ、普段の行動から見て、大体の予想は付くが・・・。

「それがさ、今、竜崎先生に聞いたんだけど、なんでも、風邪で熱を出しちゃったらしいんだ。
だから、越前は今日、学校は・・・・・・・・」

『学校は休みらしい』と言おうとした大石だったが、言い終わる前に菊丸の叫びによって遮られた。

「えーーーー!!?」

その大声にその場にいた人たちは耳をふさいだ。

「エージ先輩、声が大きいっスよ」

が、そんな桃城の文句なんかいちいち聞いてない。

「おチビ、風邪!?熱出したの?ホントに!?」

そう言って大石に詰め寄る。

「あ、あぁ。」

予想していたとはいえ、その必死さに少し引いてしまう。

(・・聞き間違いじゃなかった。)

「大石!俺、おチビんち行ってくる!!不二、センセーには適当に言っておいて!!」

そういうと手塚でさえも止める間もなく走り去っていた。
部室のドアは開け放たれており寒い風が吹き付けていた。

「・・・・まったく・・・」

手塚は一言そう言って部室のドアを閉めた。