たまには。




昼休み。

リョーマがいつもの様に英二の教室まで行ったら、英二は先生に呼ばれていて。
そこをたまたま通り掛かった桃城に屋上まで連れてこられていた。

「なんでこんな寒いとこで昼飯を食べなきゃなんないんスか…」
「まーまー、たまにはいいじゃねーか。英二先輩いなかったんだろ?」
「…そーですけど。だからってなんで桃先輩なんスか。教室で不二先輩
と待ってたら英二先輩きたのに…」

なんだかんだ言いつつ、それぞれ昼ご飯を食べながら話しをする。

「お前、ホントに英二先輩が好きなのな。」
「とーぜんでしょ。じゃなきゃ付き合いませんよ。」
「あー、そーですか。ゴチソウサマ」
「もう食べ終わったんスか?」「ちげーよ、ばか!」

桃はリョーマの首に腕を回して絞めるとぐしゃぐしゃと頭を撫でた。

「なにするんスか!」

しかし、言いながら睨むだけで逃げだそうとはしない。
いつものじゃれあい。
そこに…。

「二人でなにしてんのかにゃ〜?」

いつの間にいたのか。

「英二先輩!」

二人の声が被る。

「俺もまぜて〜」

なんだか、目が笑ってない。
桃も、やましい事なんか何もないのにダラダラと汗が流れる。

「い、いや!俺は飯食い終わったし教室に戻ります!んじゃな、越前!」
「なっ、ちょ…!」

言うが早いか、リョーマが呼び止める前に、桃は屋上を去っていた。
後に残ったのは…

「…えーじせんぱい?」
「ん?にゃに?」

忘れていたリョーマの失敗だ。付き合い始めて一ヶ月。
新しく発見した英二のこと。
ヤキモチ妬きで独占欲が強いということ…。

「えっと…、これは、別になんもなくて!先輩が教室にいなかったから。したら桃先輩が…」
「リョーマ。」

焦りながら言い訳じみたことを言うリョーマに、英二が真面目な声で名前を呼ぶ。

…やばい。絶対怒ってる…。

「せんぱい…?」
「お仕置きしないとね」

そんな、さも当然の事の様に言われても、そーですね。なんて言えるわけがない。

「お仕置き…って?」
「今ここでされたいのかにゃ?」

英二のセリフにリョーマは慌てて首をふる。
むしろ、お仕置き自体されたくない。
なにをされるんだろう…。ろくな事じゃないのは確かだ。

「おチビ、今日はうちに泊まりね」
「は?んなこと急に言われても…」
「大丈夫だいじょーぶ。んじゃ、また部活のときにね。早く教室に戻んなよ〜」

英二はそういって自分の教室に帰っていった。
残されたのはリョーマだけ。いつもなら、一緒に教室まで戻るのに…。

「…これもオシオキ?」

こんなに寂しい。
ポツリともらされた独り言に、答えをくれる人は誰もいなかった。




■□■□■□■□■□




午後の授業も部活も、オシオキが気になって身が入らない。
おかげて部長に怒られてグランドを走らされっぱなしだった。
部活が終わって英二と一緒に帰るときも、なんだか緊張してしまって…。
まだ、数回しか来たことのない英二の部屋で、一人で待っていたリョーマは、
はぁ…と大きなため息をついた。昼の寂しさがまだ燻っていて不安をかきたてる。


「おーきなため息〜。幸せが逃げちゃうぞ」
「あ、英二先輩…」
「おまたせ〜。ほいよ。」
「あ、ども」

そういって差し出されたジュースを受けとる。
リョーマの隣に座って普通に話しをする。
いつもと一緒だ。
何をされるのか、何を言われるのかとドキドキしていたが、オシオキなんて嘘なんだろうか?

「あの、英二先輩?」
「ん〜?」
「…昼のこと…なんすけど…」

お菓子を食べながら、楽しそうにしていた英二の目が、スっと細められてリョーマを見る。

「っ…」

カッコいいけど、なんだか恐い。
墓穴を掘ったことに気付いたが遅かった。

「なに?おチビ…?」
「あ、いや…オシオキって…あの…」
「されるの待ってたの?」
「は?いや!されたくないですけど!オシオキって、なにかなって…」
「そんなに期待されたんじゃ、ちゃんと応えないとね〜♪」

ただでさえ近い距離をさらに詰められてあせる。

「だから、違いますっ…て…、え?」


押し倒された事実にリョーマは首をかしげる。

「英二先輩?…えと…?」
「んだから、お仕置き。」

そういって制服を脱がせていく英二にリョーマが止めに入る。
「ちょっと!先輩っ!?」
「んだよ?別にハジメテじゃねーじゃん?」
「そー言う問題じゃないって…ちょっ…やめっ…っ」

はだけられた胸元にキスが落とされる。

「せんぱいっ…!」

確かにハジメテじゃない。それでもまだ、片手で足りるほどの経験しかない。
いつもと違う英二に恐怖心だけだがつのる。

「いやっ!せんぱい、やだっ」

抵抗するリョーマの腕をとり、床に縫いつける。

「やめてやんないよ。お仕置きだって言ったろ?」

英二だって、両手とも使えはいはずなのに、唇と舌だけでリョーマに熱を煽っていく。

「ンっ、やだ…、ゃっ」

いつもは優しくしてくれるのに。嫌がることはしないで、甘やかして抱いてくれるのに…。
今の英二は服すら乱れてない。英二に目線をやっても見えるのは頭だけ。

…顔がみたい…。

「え…ぃじ…せんぱっ、ねぇ、キスっ、キス…してっ」

英二が顔を上げる。

「リョーマがして欲しいことしたら、お仕置きになんないだろ?」
「っ…!」

お仕置きだけど…。そういわれたけど。
こんなのは、イヤだった。
イヤなのに、英二に触られるだけで体は熱くなっていって…。

「ぅ…っくぅ、ン」

荒くなる息を唇を噛み締めて堪える。
しかし、高ぶった自身をくわえられ体が大きくしなる。

「ひぅっ…あ!」


音を立てて舐められ、声が我慢できない。
すぐに限界が訪れた。

「あっ、やっ、ゃう…もっ、あぁぁっ!!」

先端を舌でくすぐられ、強く吸われると、あっけなく英二の口内に精を放った。



荒い息を繰り返しているなか、ごくっと喉がなる音がして英二がリョーマの放ったものを
飲み込んだことがわかった。
見る気になんかなれなかった。
ただ、イッた後の気だるさと悲しいような、寂しいような感覚だけがリョーマを包む。

「ふ…ぇ…」
「え?」
「…ぅっ、く…」
「ちょ…」

英二が体をおこし、拘束されていた腕が解放され、リョーマは腕で顔を覆い隠した。
泣き顔なんて見られたくなかった。
泣き声を殺す。
自分でも、どうして泣いているのかわからなかった。

「おちび、ごめん!ごめん・・?ちょ、泣かないで〜」

ぎゅーっと抱きしめてくる英二は、さっきまでとは違っていつもの英二で。
全然恐くなくて。
背中に腕を回して抱きついた。

「ごめんな、おチビ・・・」
「あやまんないでよ」
「ん、ごめん・・」
「恐かった。」
「そーだな」
「俺、嫌って言った」
「ん、俺が悪かった」
「もう、嫌なことしないで」
「約束する。リョーマが嫌なことはもうしない」
「・・・英二先輩、大好き」
「、俺も・・好きだよ。リョーマ」

抱き合ったまま、そんな会話をして。
顔を上げたら、先輩が目元にキスしてくれた。
なんだかくすぐったくて。
そのまま、またベッドに押し倒された。
今度は、優しく、やさしく。
気持ちよすぎて、おかしくなりそうで。
でも、なんだか嬉しくて。

こんな仲直りも、たまにはいいかもしれない。



■□■□■□■□■□■□



「ん・・・」

なんだか、まぶしくて目が覚めた。

「あさ・・・?」

違う、もう昼だ・・・。
時計を見て、ため息を吐く。
隣には、自分と同じように服を着ていない英二先輩がいる。
今日が休みでよかった、とか。
そういえば先輩の家族の人は、とか・・・。
思うところはたくさんあったんだけど。

「せんぱーい、起きて下さいよ」

跳ねていない髪の毛を軽く引っ張る。
抱きしめられていて見上げる形になるのが、なんだか悔しいけど。

「先輩ってば。英二先輩ー」
「んー・・?にゃに・・、おチビ」
「おきて、もう昼」
「げ。もう2時過ぎてるじゃん。」

もそもそと起き上がって、意外と逞しいからだがさらされる。

「珍しいね。おチビが早起きなんて。」
「ドコが早起き何スか・・・」
「俺より早かった」
「お腹すいた」
「はいはい。」

ベッドから降りてズボンをはき、トレーナーを着る。

「もうちょっとベッドでのんびりしときな。なんか作ってきてやるから」
「ういーっす。あ。先輩。家の人は・・・?」
「兄ちゃんも姉ちゃんも父さんも母さんも出かけてるよ、もう」
「ふぅー・・ん・・・」

自分に都合ワルイコトは考えないでおこう。

部屋を出て行った英二を、布団に包まったままで待ちながら、リョーマは笑顔を浮かべる。
たまには、こんなのもいいかもしれない。
英二が甘やかしてくれているのがわかって、とても心地いい。
昨日はとても優しかったし・・・寝起きのカッコいい英二も一番に見れたし。

愛されてるなぁとカンジながら、リョーマは目を閉じた。

英二が戻ってきたとき、リョーマが夢の中だったのは、いうまでも無い。





生ぬるい感じで。 ・・・・リハビリです。