白い雪は、まるであなたの心のように。 もう三月も半ばだというのに、東京では雪がふったりする始末。 暖かかったり寒かったりで風邪を引く人も多そうだ。 そして、今日は女子がざわめく3月14日。 お返しに悩む男子と楽しみにしている女子と。 そして、そんな中にもきちんと告白の返事をしてカップルになる人たちもいるわけで。 ただ例外は、こんなイベントが無くてもラブラブな・・もといバカップルなこの二人だった。 ホワイトデーは待ち合わせてデートしよう。 という快斗の提案で、今、新一は快斗との待ち合わせ場所に向かっている。 今6時半で、待ち合わせは七時だったから、余裕で間に合う。 しかし、待ち合わせてデート、なんてモノをしたことが無いのだ。 妙に緊張してしまう。 鞄の中には自分からの快斗へのお返しが入っていて、それが余計に緊張させる。 少し早くに待ち合わせ場所についた、が。 すでにそこには自分の恋人の姿があって。 その横顔に胸が高鳴る。 こんなシチュエーションは少女漫画の中だけの世界だと思っていた。 夜の快斗には白いイメージがあるのに、今日は黒い服を着ている。 それでも闇にまぎれることはなくて、その存在感を示している。 ただ、立っているだけなのに。 快斗の前を通っていく女達がチラチラと視線を送っていくのがわかる。 そのうち、1つのグループが快斗に声をかける。 しかし、残念そうにしながら去っていく。 彼女達を苦笑で見送って目線を上げた快斗と目が合った。 「ぁ・・・」 にっこりと微笑まれて、なぜか居心地が悪くなる。 「新一。」 「快斗・・・えと、今の・・・」 「あぁ、見てたんだ?」 「声かけれなくて」 「ヤキモチ妬いた?」 「なわけねーだろっ」 なんでそんなにカッコいいんだ、なんて・・絶対に言ってやらないけど。 心の中だけで文句を言ってみたり。 「ほら、さみーんだから早く行くぞ!」 「あ、待ってよ新一!」 手を繋がれる。 「な、離せよ!」 「やーだね。いいじゃん、手、繋ぐくらい」 「よくない」 離そうとするがぎゅっと握られてしまう。 「快斗っ」 「大丈夫だって、誰も見てないから」 「そーいう問題じゃねーしっ」 「はいはい」 「快斗っ!!」 結局手を繋がれたまま、店についてしまった。 「くっそ・・」 「そんなに拗ねないでよ。せっかくのデートなのに」 「デートなんていつもしてるじゃねーか」 「え?」 「コンビニ行ったり、お前現場に迎えに来たりするし、あと・・予告の日とか」 「それはデートじゃなーいっ!!」 「ちげーの?」 「ちっがう。そんなデートいやだ」 グラスで乾杯する。 周りにカップルがたくさんいて、個室がよかったか?とも思ったが、 新一が気にしないというし、まぁいいか・・と、運ばれてくる料理に手をつけながら会話をする。 が、しかし。 快斗が選んだ店だけあって思ったよりも美味しかったそれを食べながら、 しかし快斗のご飯のほうが美味い、と言った新一のセリフに、抱きしめたい衝動を押さえたり。 たまにこぼれる新一の笑顔に、慌ててみたり。 やっぱり、個室にしたらよかった、と快斗が思ったのは言うまでもない。 「美味かったなー」 「うん、そうだね。」 周りに、見るなっ、無言で威嚇しながら、しかし、しっかりと新一の表情と料理を堪能した快斗は、 満足気に頷いた。 新一も満足そうだし。 「あー・・雪だー」 「寒いはずだな。」 立ち止まって空を見上げる。 白い結晶が空から落ちてくる。 触れると、溶けてしみこんでいく。 「快斗」 新一が快斗を呼ぶ。 「ん?」 「これ・・・。おかえし、俺から」 快斗に綺麗に包装された箱を差し出す。 「マジ?」 「俺もお返しするって言ったし」 「うっわ、うれし!」 「大したもんじゃねーし」 感動する快斗を置いて先に歩き出す。 それが照れ隠しであるということはバレバレで。 「新一」 「ん?」 呼ばれて振り返る。 「わっ、ビックリした・・。快斗、近い!」 新一が振り返ったら目の前に快斗の顔があってビックリした。 離れようとするが、それより早く快斗に抱きしめられる。 「快斗?」 「ありがとね、新一」 「は?お礼なら、俺のが・・・。飯おごりだったし・・・」 「お返しだからね」 「俺のだって、お返しだ」 「うん、ありがと」 そう言って、口付ける。 そっと、啄ばむように、唇を何度も。 「ンっ・・、かいとっ、外・・・っ」 「あぁ、そうだね」 「そうだね、じゃねーっ!!離せ、バカヤロっ」 新一は快斗を突っぱねて、真っ赤な顔をして歩いていく。 快斗は、かわいいなぁ、とその後姿を眺めて、後を追って歩き出す。 顔がにやけるのは、まぁ、許して欲しい。 きっと、キスより先に進むのはまだ先だろうけど。 自分の忍耐力をたまに尊敬するけど。 しばらくはこんな関係もいいかな。
ホワイトデー小説! バレンタインの続きの二人。 ふふ・・スランプってバレバレ?? この新一はやけに可愛らしいっすね(汗) 戻