「快斗。別れよう。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」



新一の言葉の意味が解らなくて。
心臓が止まったかと思った。





何の日?





「な、に・・言ってんの?」
「別れよう」
「嫌に決まってる!!絶対に別れない」
「・・・快斗。俺、出かけるし。帰ってくるまでには家に帰っててくれな?」
「新一!!」

「今日は、キッドの予告はないのかよ?」
「は?」
「まぁ、俺には関係ないか。」
「ちょ、新一・・・?」

「それじゃぁな。そうだな・・・、帰るのは日付が変わってからになるかもしれないから。」





そういって、新一は家を後にした。



残された快斗は。

「な、んなんだ・・・?」

まさか、新一が本気で別れる、なんていうわけが・・・。
いや、でもそんなこと。
だって、ホントに別れるとかになったら、新一は容赦ないと思うし。



「うーん・・・・」

リビングのソファーに座って、快斗は難しい顔で考えた。
一体、なんなんだろう・・・。














某、シティホテルの屋上。
風が冷たい。
日付変更もう時間がない。
30分をきったところだ。
もうすぐで4月2日になる。

今日、何時間ココにいただろう。

薄手のコートの前を手繰り寄せ、新一は首をすくめた。

忘れるなんて。記念日にうるさいくせに。
来なかったら本当に別れてやる。

「バ快斗・・・」

月を見上げてそう呟く。
そのときだった。

目の前が翳る。
マントを靡かせながら、あの時のように、目の前に降り立った白い怪盗。


「申し訳ありません、名探偵」
「おっせーんだよ・・・」
「私としたことが。この日のことを忘れていたなんて」

コツコツ、と近づいてくるキッドを睨みつける。

「来なかったら、ホントに別れようと思ってた」
「今日中に来れてよかったです」

本当に、ほっとしたように言うキッドに、新一は笑みを浮かべる。

「なんでこんなに遅かったんだよ、俺ずっと待ってたんだぜ?」
「すいません。別れよう、があまりにショックだったもので・・・」
「なさけねーやつ」

現場で別れるって言ったらすぐに捕まえられそうだな。

そんなことを言う新一に、キッドはホントにそうかも、と困ったような笑みを浮かべた。

「そんな意地悪、やめて下さいね・・・」
「どうしようかな」
「めーたんてー」
「んだよ?」
「世の中、ついていい嘘と悪い嘘と言うものが・・・」

話をしながら、二人の距離は段々と近づいていく。

「んなこと、俺の知ったことじゃねーよ」

新一はちょっと拗ねているらしい。
そんなことを言う新一に、どうしてやろう、と意地悪な笑みを浮かべると。
時計で、まだギリギリ1日だと確認する。


「俺が別れようってどうします?」
「・・・」

キッドのそのセリフに頭の中で想像したのだろう。

一瞬浮かべた傷ついたような表情。
しまった、と思ったのも束の間、その後の笑顔にゾクリとした。
決して、悪い意味ではなくて。

「俺が、逃がすわけないだろう?地下室にでもぶち込んで、一生、飼い殺してやる」

キッドがペットだなんて、カッコいいじゃねーか。

嘘かホントか。

どちらにしても、恐ろしいが。
そう言う新一の笑顔に、見惚れてしまう。

・・・・十分に、お互いに狂気を抱えているようだ。



「もうすぐ終わるな。」




エイプリルフールが。





「そうですね」



スルリ、と首に回された腕に、キッドは目を見開いた。
ケータイのアラームが日付の変更を告げる。

「好きだぜ、キッド」

重ねられ、すぐに離された唇。
新一のカッコよさに、妖艶さに頭の芯がクラクラする。

「愛してます、・・愛してる。新一。」

荒々しく重ねられた唇。
深い口付けに新一は落ちそうになる。

怪盗紳士の口調でなくなったのは、キッドが・・快斗が余裕を無くした証拠。

「新一から誘われて平気でいられるほど、俺は出来てない」
「期待して、いいんだろ?」
「当然。俺が、新一の期待を裏切るわけないだろ。ここのホテルのスイートとってるよ」

こういうところだけ、なんて用意周到な。

そのまま、ホテルの部屋になだれ込んで。


新一に誘われて、これ以上無いくらいに期待に添ってくれた快斗に。
誘ったことを後悔するのは、次の日のこと。












Aprill fool

月が二人を分かつ時

漆黒の星の名の元に

波にいざなわれて

我は参上する


怪盗キッド






この日が、二人が邂逅記念日。





本当は一日に上げるはずだったのに・・! 遅くなりましたが快新邂逅記念小説。 あれですね、無題の柏崎様に捧げた小説とネタが被ってますね。 あれを邂逅記念小説にすればよかった、と今更ながらに思います。 ちなみに、これは快新祭2に投稿させて頂きました。 にしても最近、裏を書いてない。 書きたいけど書く時間がぁぁぁあ。 これの裏、書きたいな。 頑張ろう、うん。