「わー、珍しい」

快斗は、小さな声で呟いた。



昼寝



土曜の昼。
快斗はいつものように工藤邸を訪れた。

新一からは合鍵を貰っているのでチャイムも鳴らさずに家に入る。

玄関に靴はあったから家にいるんだろう。
にしては気配が無い。

首をかしげながらリビングに入った。
そして、そこで見た光景に立ち止まってしまう。
が、しかし。すぐに快斗の顔には笑顔が浮かんだ。

「わー、珍しい」

そこには、ソファーの上で、本を片手に転寝する新一の姿があった。

寝ているのが珍しいわけじゃなくて、人が来ても新一が起きないことが珍しい。
いつも、寝ていても人がくると目を覚ますのに。

快斗は微笑みながら新一に近づいた。
新一が持っている本を取り上げ、栞を挟んでテーブルの上に置く。

「かっわいー寝顔」

快斗が新一の隣に座ると、ソファーが沈み、新一の身体が、快斗のほうに倒れてきた。
コテン、と快斗の胸に新一が持たれる。
これでも起きないなんて、そうとう熟睡しているのだろう。

「疲れてるのかなー・・?」

目の前にある頭をそっと撫でる。
さらさらとした髪を堪能する。

休みだし、静かだし、天気はよくて暖かいし。
確かに昼寝をするには最高だ。

快斗はそっと、新一の頭を自分の膝の上に乗せた。

「んー・・・」
するともぞもぞと動いて居心地のいい場所を探しだす。
あまりの可愛さに思わず口元を覆ってしまった。

しばらくして、安定する場所が見つかったのだろう。
安心したように再び規則正しい寝息が聞こえてきた。

「もー、ほんとに可愛いんだから」

そう言って、新一の頬にかかる髪を払う。
すると・・・

「・・・・・・ぃと・・・ん、」

快斗の動きが一瞬とまる。
吐息と共に聞こえた、自分の名前。
甘さを含むそれに、快斗が平気でいられるわけが無い。
今の快斗の顔はとてもじゃないが人にはお見せできない。

「ほんっとに・・・。寝てても煽ってくれるんだから」

明日も休みだ。
今日の夜は手加減しないでいいだろう。

「起きたら、覚悟しててね。新一」






気づいたら快斗も寝ていて。
もう空には闇が迫っていて。
おはようのキスで快斗が新一を起す。
目を覚ました新一が、真っ赤な顔で快斗にお礼を言って。
いつものようにご飯も風呂も済ませて。

その夜、新一が眠ることが出来なかったの、は言うまでもない。




プラトニック・ラブな感じで(笑)