おむかえ。
おむかえ
終礼が始まる。
教壇に立って話している先生なんか全く気にせず、黒羽快斗は頬杖をついてボーっとしていた。
そのどーでもよさそうな横顔はまぁ、カッコイイのだが。
その頭の中と言えば・・・
(今日は久しぶりに新一に会える〜。前に会ったのっていつだっけ?
もう、2、3週間くらい会ってない??・・・行くって言ってあるけど大丈夫かな?
家にいるかなぁ。事件とか無ければいいけど。あー、早く会いたい。
おもいっきり抱きしめて、キスしたい。そんで・・・)
「はぁ・・・」
このため息の後に続くのは 新一〜 だ。
終礼も終わりに差し掛かった頃、窓際の席がざわつき始めた。
そして快斗の耳に入ってきた言葉。
『あれって、工藤新一じゃない?』
「なっ!?」
突然、大きな声と共に立ち上がった快斗にみんな驚く。
当の快斗はそんなことは全く気にせず、慌てて窓から校門を見た。
図ったようなタイミングで新一が顔を上げる。
そして、快斗と目が合って、にっこりと微笑んだ。
"まってて!"
口だけでそういうと、鞄をひっ掴んで、
「せんせ、俺もう帰るから!」
言い終わる前に教室を飛び出した。
「新一!」
「よっ」
教室から新一の待つ校門まで全力疾走約2分。驚異的なスピードだ。
さらに凄いのは息の乱れの無い所か。
「びっくりした。教室の中、大騒ぎだったし。どしたの?」
「事件の帰り。今日、家くるって言うし…たまにはいいかなって。」
快斗の顔は満面の笑みだ。
「すげー嬉しい!終礼抜けて来たし。」
「いいのかよ?」
「いーの。久しぶりなんだから。久しぶりじゃなくても、新一を優先するけどね」
校門だと言うのに抱きしめる。
「こら、快斗!」
「我慢できないし」
「我慢しろ」
「えー・・・」
「我慢しろ。・・・帰ったら、甘やかしてやるから」
驚いた。まさか新一がそんな事いうなんて。
そっぽ向いてる新一の顔はかすかに、本当に少し、赤くなっている。
嬉しさに、顔が緩む。
会いたかったのは、俺だけじゃない。新一も同じ。
「新一・・」
「さっさと帰るぞ!」
こういう時、新一が照れているのはよくわかる。
まぁ、傍から見たら機嫌悪く見えるかもしれないけど。
そんな風に、照れて先に歩いていく新一を可愛く思って、ニヤケ顔のまま追いかける。
並んで歩いたら、バカ面、と言われたけど気にしない。
一緒にいられる。
たったそれだけのことで、幸せを感じられる。
のほほん
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