旅行中1

旅行中ミニSS

1日目(5日)


「せっかくの夏休みなんだから、旅行行きたい」

いつもの通り冷房の効いた涼しい部屋で読書を堪能していた新一に快斗が言った。
が、新一は、少し目をやっただけですぐに本に戻してしまう。

「行って来れば?」

新一のその言葉に、快斗はがっくしと肩を落とした。

「あのね。新一も一緒に決まってるでしょ」
「んー・・・」
「ね?ね?」

床に座っていた快斗は、ソファーに頭を乗せ、下から新一を覗き込む。
そんか快斗に新一は、はぁー。とため息を付き、パタンと本を閉じた。

「・・・まぁ、たまにはいいか」
「やった!んじゃ、明日出発だからっ」
「はぁ!?」
「大丈夫。準備は完璧」
「いや・・」
「あー、楽しみだなぁ」
「あーっと、快斗?」
「ん?」

にっこにこの笑顔だ。
普段、そんなにも俺は快斗を蔑ろにしてるだろうか?
新一は思わずそんなことを悩んでしまう。そのくらい、嬉しそうな笑顔だ。
もう諦めた。いや、諦めよう。うん。
こんな顔見たら何も言えない。

「・・・・・いや、うん。わかった」
「へへっ、楽しみにしててねっ」





■




そんな話を、昨日した。で、寝た。
そして、気が付いたらどこぞのホテルだった。



「ここ、は?」
「あ。おはよー、新一。ホテルの部屋だよー」
「何時の間に・・・」
「自家用ジェットで、ちょっと」

唖然とする、というか。開いた口が塞がらないというか。

「今、何時・・・」

深い深いため息とともに、訊いた。

「夜中の3時。日本では2時か。寝よ?新一」
「寝よ、じゃねーよ。ちゃんと旅行はO.K.したろ?何でこんな・・」
「だって。新一は約束してたって事件が入ったらそっちに行くだろ」
「う・・・」
「それに、驚かせたかったし」
「・・・十分驚いたよ」
「大成功?」
「あぁ」
「怒ってる?」
「そりゃぁな」

そんなこと、今更訊くなら初めからするなと思う。
ごめんなさい。と言う快斗は叱られた子供のようで可愛い。
思わず笑ってしまう。もちろん、隠れて。

「新一ぃ〜」
「何やってんだよ、情けない声出して」
「へ?」
「3時過ぎてる。寝るんだろ?」
「!うんっ」
「おやすみ、新一」
「ん、おやすみ・・快斗・・」

一緒のベッドで。
キスして。
新一は快斗の腕の中で。
おやすみなさい。



全然ミニSSじゃない(汗)