休日 「ん〜・・・。」 目が覚めて起きてみたら11時。朝・・・・というよりも昼に近い時間。 そして妙な違和感に気づく、が寝起きの新一はそれがなにかわからない。 (なんだろ・・・・・・・・?ま、いっか・・) 自分に害はない、と感じ取ったのだろう。 そして、そのまま再びベッドに倒れこみ眠りの世界へ旅立とうとする。 そのとき、 「わーーー!待った待った!!新一〜、せっかく起きたのに寝ちゃダメじゃん!!」 そう言って新一を引き起こす。 「ん・・・・・?かいとー?」 まだ寝ぼけているらしい。ボーッとした目で快斗を見ている。 が、何か思いだそうとしているらしく、急に難しい顔をして考え出した。 (あ、かわいv) そして、考えるのに飽きたのか、それとも答えが分かってスッキリしたのか、 快斗に抱き起こされベッドの上に座っていた新一はそのまま快斗の肩に頭を預けてまた寝ようとしている。 「わーーーっ!!新一ダメっ!寝ちゃダメッ!!」 そう言って新一を引き剥がそうとする快斗にギュッと抱きつく新一。 「やだ。快斗。寝る」 (ううう・・・・・。嬉しいんだけどさ、嬉しいんだけど・・・・) 朝の新一は可愛いのだ。 夜、ベッドの中でも可愛いし、普段も可愛いのだが、寝起きの新一は子供のように甘えてくる。 堪らなく可愛い。が、しかし!快斗にとっては嬉しいと同時にそれが問題。 可愛すぎるから、理性を保つのに必死なのだ。 「新一?もうお昼だよ、起きよ?」 「ん〜〜〜〜。あ、快斗。・・・・・おはよ」 そう言って笑うと快斗にキスをした。 「ん。おはよ、もう起きたね」 快斗も新一にキスを返す。 これが二人の朝のお決まりのあいさつ。触れるだけの優しいキス。 そして、頭が少し働き始めた新一はさっき感じだ違和感の正体が分かった。 「・・・快斗。いつ帰って来たんだ・・・?」 「あ、うん。3時・・・くらいかな。ゴメンね、遅くなって・・・」 「ううん。俺こそ、ゴメン。寝ちゃってた、・・・だろ?」 「うん。寝てて安心した。起きて待ってたらどーしようかと思ってたから・・」 「ゴメンな・・・。」 「だから、いーってば。」 そう言ってにっこりと笑う。新一も苦笑いを浮かべる。 「・・・お帰り、快斗。」 「うん。心配、かけてゴメンね・・・。ただいま、新一・・」 お互いに抱き合い、また、唇を重ねる。 昨日の夜。(日付け的には今日)3時頃。 いつもより仕事が手間取ってしまい、予定よりもかなり遅くなってしまったのだ。 (新一・・・。大丈夫かな。ちゃんと寝てるかな・・・) と、新一のことを心配しながら帰っていたのだ。そして大きな洋館が見え、 新一の部屋にまだ明かりがついているのが分かった。 (あー、まだ起きてんのかなぁ・・・。新一・・・) そう思いながら鍵の開いてると分かっている新一の部屋の窓を開け、そっと中に入る。 そして、そこで目にしたものに一瞬、驚いたがすぐ快斗、いやキッドの顔には微笑みが浮かんだ。 そこには、キッドの帰りを待っていただろう名探偵・工藤新一の幼い寝顔があった。 キッド同様、人の気配には敏感な新一はキッドが帰ってきたにも関わらず、目を覚まさない。 キッドはそっと新一に近づいた。 (ここまで、無防備にされるとなぁ・・・・) 苦笑をもらす。 ベッドの上に座りながら本を読んでいたらしい。 腕が力無く垂れ下がり、本の間に指がはさまっている。 キッドはその本を取り、ベッドサイドのテーブルに置く。 そして、新一の身体を抱き上げて、ベッドに横にさせる。 「・・・ゴメンな。新一。」 新一に囁く。 「ゴメンな、新一。・・・ただいま。」 と、今度は耳元で囁く。 「んっ・・・。お、帰り・・・キ・・・ッド」 「新一?」 寝てたんじゃ・・・。起こしたのか・・・? そう思い新一の顔を見るが起きている気配はない。 どうやら寝言だったらしい。 (俺の夢、見てくてんのかな・・・。) 嬉しくて自然に顔に笑みが浮かぶ。 今日の宝石もパンドラじゃなかった。分かっていたけど、やはり、気持ちは沈む。 しかし、新一の一言でこんなにも幸せを感じている自分におどろき、嬉しくもなる。 (やっぱ、すげーよな、新一・・・) 自分をここまで夢中にさせ、唯一、自分の思い通りにはいかない人。 どんなにすばらしく美しい絵や宝石とならんでもけっして霞んでしまわない。 それほどまでに美しく、みんなの目を引いてしまうのだ。 自分の探し求めているパンドラでさえも、きっと、新一にはかなわない。 やっと手に入れることが出来た、俺のものだ。 俺の大好きな蒼くきれいで真っ直ぐな両の瞳は閉ざされていて。 その目に今すぐにでも自分を映して欲しいと想うが、こんなにぐっすり眠っている新一を起こすのは、とてもじゃないけど出来ない。 本当に、本当に、大事な人。 新一の薄く開かれた唇は、まるでキスをねだり、キッドを誘っているようで・・・。 キッドは身体をかがめ、誘われるままにその唇に自分の唇を落とした。 重ねた唇をゆっくりと離して、そして、 「It is loved. My famous detective ・・・.(愛しています。私の名探偵・・・。) More, at the side of you ・・・・・.(ずっと、あなたの側に・・・・・・。)」 そう囁くと再び眠っている新一に触れるだけのキスをした。 昼ごはんを食べ終わり、リビングのソファーでゴロゴロとじゃれあっていた新一と快斗は どっから見てもバカップル以外の何者でもない。 今日は珍しく快斗の腕の中で新一がおとなしくしている。 新一は快斗のくせっ毛を触るのが気に入っていいるらしい。 そして今も快斗の髪の毛を、手で梳くようにしていじっている。 快斗は快斗で、それが気持ちよくて目を閉じている。 なかなかほのぼので微笑ましい光景だが、見ている方は二人の甘〜い空気に当てられるだろう。 ふと、新一は朝感じた疑問を快斗に聞いてみた。 「なぁ、快斗ォ・・・?」 「ん〜、何ィ〜?」 「今日の朝さぁ、すっげー、嬉しそうだったろ?何かいいことあったのか?」 「え?」 新一は、パンドラでも見つけた?と聞いてみる。 「んーん。違うよ。でも、そっかー、そんなに顔に出てた?」 「うん。なんかもー、めちゃくちゃ幸せって顔してた。」 「そっかぁ。うん、まーね。凄く嬉しいことあったんだ〜♪」 快斗が嬉しそうなのは新一も嬉しいんだけど、 自分の知らないところで快斗が一人よろこんでいるのはなんか複雑だ。 この気持ちは嫉妬、だろうか。 それでも、新一は平静を装って聞いてみた。 「へ〜、よかったな。何があったんだ?」 「ヒ・ミ・ツvあ、でも覚えといてね!俺を幸せに出来るのも、嬉しい気持ちに出来るのも、ぜーんぶ新一だけだからねv」 「はぁ?俺、なんかしたっけ・・・?」 そういう新一に気にしない、気にしないと言う快斗。 新一も始めは難しい顔をしていたが、快斗が喜んでいるし、それもなんか自分絡みのようだし。 ま、いっか。と、再び快斗の髪を梳きはじめた。 快斗が嬉しそうだからいい。 自分がなにをしたのがわからないが、自分のした事で快斗が喜んでくれたのなら、新一だって嬉しい。 久しぶりに二人だけ過ごす休日を新一も快斗も大切にしたいと思っているのだ。 滅多にない穏やかな時間が、ゆっくりと流れていく中に、二人の静かな吐息だけが聞こえていた。 戻