養護教諭と生徒
DearestW
「おじゃましまーす」
「あ、黒羽」
「?どしたの、センセ」
「悪い、今から病院に付き添って行かないとダメなんだよ。何か用だったか?」
白衣を脱ぎ、荷物をまとめている。
ソファーにはぐったりとした生徒が横になっていた。
「どしたの?」
「さぁな。取り合えず、急用じゃなかったら後にしてくれ。悪いな」
そういうと、快斗の横を通り過ぎて横になっている生徒の方へ向かう。
「立てるか?」
新一の問いかけに、ゆっくり起き上がる。
しかし、立てても歩くのはしんどいらしく、新一が手を貸した。
「黒羽、鍵かけて職員室に返しておいてくれ」
「あ、はい・・」
「じゃぁ、頼んだな」
そういうと、新一はその生徒と一緒に保健室を後しにした。
はぁ〜と大きなため息を付き、快斗はさっきまで急病の生徒が寝ていた椅子に腰をおろす。
くっそー、誰だ、アイツ。見たことねぇから一年か。
分かっている。新一は学校の校医でなんだから、当然のことだ。
でも、頭と心は別物、と言うか、なんと言うか。
俺の独占欲は半端じゃねーんだよ。新一、全然俺のほう見てくれねーし!
ってか、新一。今日学校に帰ってくるかな。家押しかけてもいいかな。
いいかな、とか言いながら、すでに快斗は学校が終わったら新一の家に行く気満々だ。
「くそー。なんで俺・・高校生なんだろ・・・」
もし同じ教師問立場だったら、もっと新一の近くに入れた。力にもなれた。
所詮、自分は高校生だから。そんな自分にイラついても、歳の差はどうしようもないんだけど。
新一がないないら、保健室にいてもしょうがない。
快斗は保健室の鍵をかけ、自分の教室に戻っていった。
その日は、やっぱり新一は学校には戻ってこなかった。
家の電気がついているから、快斗がいるということはすぐに分かった。
なんだかそれが嬉しくて、思わず顔に笑顔が浮かぶ。
「ただいまー」
玄関を開けて、そう声をかけるが返事が無い。
寝てるのかと思ったがまだ10時になっていないんだから、そんなことは無いだろう。
もしかして、待っててくれたわけじゃない?でも、鍵は開いてたし。
浮かれていた気持ちが沈んでいくのが自分でもわかった。
首をかしげて、リビングへ向かう。
そこには、確かに快斗の姿があった。
「快斗・・?いたんだ、よかった。返事ないからいないのかと・・」
「遅かったね?」
その一言で、快斗が怒っているんだと分かった。
「あ、あぁ」
「何かあった?」
「って・・。お前も知ってるじゃねーかよ。今日、病院に行ってたんだ」
「それで、どうしてこんなに遅くなるのさ」
「えっと・・あの子腕骨折してて。そっからの発熱で。
でもご両親共働きで家にいないって言うから。
ご両親に連絡して、仕事終わったら病院に向かいえに来て下さいって。
で、さっきご両親に引き渡して、やっと今帰ってきたんだ」
新一は快斗の前に座りながら、返事を返した。
「ふーん・・」
「快斗、なに怒ってるんだよ」
「別に。どうせ、俺はガキだし」
「は?」
突然飛んだ話に、流石の新一も訳がわからない。
「こんなことで。仕事だって分かってるのに、こんな風に新一のこと困らせてるし。
新一と今まで一緒にいた奴にも腹立ってるし。俺はなんもしてやれないし!!」
「おい、快斗・・・」
「もっと、俺が早く生まれてれば。新一と同じ立場だったら、もっと一緒にいれる。
迷惑もかけないですむって・・・!」
ふぅ、と新一が息を吐いた。
「そんな、気にしてたのか?歳のこと」
「だって・・」
「あのな。歳のことは、俺だって気にしてるんだ」
「・・・え?」
「あのな?お前は高校生で、俺はその学校の教師なんだぞ?
もう26なんだぞ?しかも男で。お前のが若いんだから、
もし俺より同級生や年下の女の子の方がいいって言われたらどうしようって」
「そんなこと無いよ!!」
って言うか、こんな可愛くてカッコいい人、新一以外にいるわけない。
快斗がそう即答するが、新一は小さく苦笑を浮かべただけだった。
「それにな。俺は別になんも困ってねぇし。むしろ、助けられてる。
ちゃんと、お前の存在に。
今日だって、帰ってきて・・電気ついててお前が来てくれてるんだってわかって
すっげぇ嬉しかったんだぜ?なのに、返事してくんねぇし・・ちょっと寂しかったけど」
きっと、自分はこういう所が子供なんだ。と快斗は思った。
自分の劣等コンプレックスに苛まれて、新一気持ちを考えられない。
「ご、ごめん・・」
「お前は、いつもどおり自信満々でいればいいんだよ。俺は、どんなでもお前がいいんだから。
それより俺、腹減ったんだけど・・・?」
新一が顔を近づけて快斗の顔を覗き込む。
今、さらりと凄い口説かれたような気がする。
「快斗」
「え、あ。うん、ちゃんと用意してあるよ。食べよっか」
「サンキュ。あ、それと」
立ち上がってダイニングへ行こうとする快斗に新一が声をかけた。
「ん?」
「今日はまだ、一度も・・触れられてないんだけど?」
今日の新一は・・・。快斗はクラリとした。
新一は座っていて快斗は立っているんだから、自然、新一は快斗を見上げる形になるわけで。
照れて上目遣いに、そんなことを言われて快斗が平気でいられるわけもなくて。
返事より先に、快斗は新一を抱きしめていた。
「新一」
「ん・・」
「大好き、新一」
「あぁ、俺も・・・」
見詰め合って、近づいて。重なった唇が熱い。
「新一・・我慢できそうにないんだけど、俺・・」
「・・・飯食って、風呂入ってから、な」
そういって、新一から唇をよせた。
第四弾。
んー・・不完全燃焼。
目指したのは高校生な快斗と大人な新一。
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