工藤新一はネコのようだと思う。
こっちがかまうと、そっぽを向いたり、噛み付いたり引っ掻いたり。
だけど、ふとした瞬間、甘えるように擦り寄ってきたり、見つめてきたり。
ネコ
「新一、遊びに行かない?」
「行かない」
「映画…」
「見ない」
「ゲーム、」
「しない」
まるで取りつく島もない。
せっかくの休日。
2人きり。
なのに新一はずーっと本を読んでいる。
「新一ぃ、かまってよぅ」
「あー、後でな」
「後っていつさ!」
「そのうち…」
「せっかくの休みなのにぃ!!!」
「・・・・・・・・」
もう返事すらない。
快斗は諦めたように一つため息を吐いて、雑誌に手を伸ばした。
いくら相手をしてくれなくても新一のそばを離れる気は全くなかった。
夕方。
結局、一日中本を読んで堪能した新一はぐっと体を伸ばした。
その顔は満足気だ。
そして、一人で黙々とテレビゲームをしている快斗を見た。
「快斗」
声をかけるが返事はない。
そんなに集中しているのか?
新一はもう一度声をかけた。
「快斗!」
「・・・」
やっぱり帰ってくるのは無言。
新一は四つんばいで快斗に近づくとその背中にもたれかかった。
「快斗、」
「・・・」
もちろん、快斗が本当に気付いてないはずがない。
わざとだ。
昼間の仕返しのようなものだ。
しかし、悪いことをしたと思っていない新一に快斗の気持ちなんてわかるわけがなく。
自分の声にいつも敏感な快斗が反応しないことに、どこか悪くなったのかと心配になる。
新一は、前に回り込みあぐらをかいた快斗の足に手を掛けると下から覗き込むようにして見つめた。
無防備な、新一は全く意識していない行動でも、やられた快斗はたまったものじゃない。
思わず下げた視線と合ったのは、何とも言えず淋しそうな新一の顔。
・・・と言うか、眼。
「快斗!」
その眼は反則だって。
ダメだって新一。ホントずるいよ。
快斗は、そのまま、新一を抱き込んだ。
「っわ、・・快斗」
一瞬、バランスを崩し、驚いたような声をだしたが、すぐに安心して快斗の胸にすりよる。
「あぁ、もう。ホント、大好きだよ、新一」
「・・・っ、バーロ。そんなん、俺は、アイしてんだからなっ」
耳まで真っ赤にして告白する新一に、やっぱりかなわない、と呟いて、快斗は優しい動作で
新一に顔を上げさせると、その唇に、唇を寄せた。
「俺も、愛してるよ」
ホント、悲しくなるくらいそっけないのに、時折、こんな風に甘えてくる気紛れなネコ。
そんな彼が愛しくてたまらない。
|