電車
「うぜぇ…」
「新一、そーいうこといわない」
早朝の通勤、通学ラッシュ。
ただでさえ朝に弱い新一に、寝不足でのこの人との密着状態は我慢できるものじゃなかった。
「ねむい…」
「って、新一。こんなところで寝ちゃダメだよ!?」
「わーってる」
しかし、新一の目はすでにうとうととしている。
軽く快斗にもたれていると思っていたのは気のせいではないようだ。
「…あー、もう。しかたないなぁ」
快斗は満員電車の中、壁ぎわを陣取り、新一をもたれさせた。
そして、自分は新一をかばうように壁に手をつく。
「立ったままは寝にくいと思うけど、我慢してね」
「…へーき」
そういうと、新一は快斗の肩に頭を預けて、目を閉じた。
快斗は新一の頭をそっと撫でた。
…、もう。ホントはこんなところで寝てほしくないのに。
自分以外のその他大勢に寝顔を曝すなんて、冗談じゃない。
だから、そこは自分がうまく隠すけど。
俺がいなかったら、新一かこんなところで寝るはずないってこともわかってる。
だけど。
もーちょっとさ、周りに警戒心を持ってくれたっていーんじゃない?
快斗は、ちらちらとこちらを伺っている周りに睨みを効かせる。
そして、新一の体に片腕を回して支えた。
軽い牽制の意味を含めて、密着度を高くする。
自分がいるとこーまでも隙だらけになる新一が、嬉しいような、嬉しくないような。
微妙なところだ。
免許、早く取ろう。
強く、切実に、快斗はそう思った。
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