学校で
「はぁ・・」
白い息が空に溶けていく。
教室の窓から空を眺めて、快斗はまたため息をついた。
「・・・・会いたいな・・・」
もうどれだけ会ってないだろう。
「会いたいよ。新一」
その手には、携帯電話。
その先には。
『バ快斗が!くだんねー事でいちいち電話してくんじゃねーよ』
「だって!メールしても返事くれないじゃんっ」
『ったりめーだ』
「ひどいー。心の底から、本当に会いたいって思ってるのに!!」
『今朝、一緒に家出ただろうが。まだ、学校が始まってから2時間ちょっとだぞ?
たった今、2時間目が終わったばっかだぞ!?』
「それでも〜っ」
『でもじゃねぇ。あ、チャイム鳴る。じゃ、またな』
今朝までずっと一緒だったのだ。
朝、学校に行くときに別れたばかりなのに、いったいどうしたらあんな風に 会いたい なんて言えるんだか。
本当に、新一にはわからない。
「しんいちぃ〜〜〜」
電話を切ろうとすると、情けない声がして、新一は呆れたように息を吐いた。
「帰ったらかまってやるから。学校終わるまで我慢しろよ」
「・・・・・・」
「快斗?わかったのか?」
「・・・・約束?」
「わーったわーった、約束な」
「絶対だからね」
「ああ。んじゃ、またな」
っぷ、ツーツーツーという機械音がして、新一から電話が切られたことがわかった。
しかし、快斗の口元には笑み。
(よっし!)
心の中で大きくガッツポーズ。
「今の、工藤君?」
「ん?まーな」
青子の言葉に、快斗は嬉しそうに答える。
新一は約束を絶対に破らない。
昨日やーっと大きな事件が一段落したところだから、警察からのラブコールもないだろう。
これで、新一とゆーっくりできる。
「帰ったら、覚悟してろよ。新一」
電話を切って、新一はため息をついた。
まさか、学校なのに電話がかかってくるなんて。
(快斗の学校はどうかしらねぇけど、うちの学校は携帯禁止なんだっての)
新一は、事件のことがあるから特別に許可を貰っているが、警察からの要請以外での使用は禁止だ。
警察だって、滅多に新一が学校にいるときに連絡してきたりはしない。
「ったく。」
呆れたように呟くが、その顔はわずかに笑みを浮かべている。
「ま、ここのところ、かまってやれなかったしな」
俺だって、少し快斗不足・・・・いやいや。
(待て俺。考え直せ。おかしいところがあったぞ)
自分の思考に言い聞かせる。
あくまで、快との我侭に付き合ってやるんだ。仕方なく、相手してやるんだ。
そう言い訳して、自分に言い聞かせている時点で手遅れなんだが、新一はよし。と頷いた。
明らかな自分の本心は見て見ぬフリをする。
少し熱を帯びた頬を外の冷たい風にさらした。
「はー・・・」
白い息が流れていく。
「仕方ない。今日は覚悟するか」
今夜はきっと寝かせてもらえないだろうなーとか考えて、さらに赤くなる。
頭をふって邪念を追い出して、新一は教室に向かった。
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