邂逅記念ミニ小説



邂逅記念ミニ小説








夜空から白い怪盗が静かに降り立った。 


『よう、ぼうず。なにやってんだ?こんなところで』 

しかし、その怪盗は次の瞬間には不敵な笑みをうっすらと浮かべた青年となり、 
目の前の背中に向かって声をかける。 
坊主、と称するのは余りに不適切な青年は、背を向けしゃがんだまま、導火線に火をつけた。 
同じく、口元に愉しそうな笑みを浮かべならがら。 

パァンという音と共に夜空に花が咲いた。 

『花火』 

立ち上がってゆっくりと振り返る。 

あのときと同じ日。同じ時間。同じ場所。同じ科白。 
違うのは、お互いの姿が、仮初めのものではないと言うこと。 




「誰がぼうず だよ」 
ちょっと拗ねたように言うと、 
「ちょっとした演出じゃん。」 
と苦笑で返される返事。 

「今年で10年目だな」 
「だね。」 

お互いに歩み寄る。 
今はもう。白い泥棒も眼鏡の少年もいない。 
しかしその視線は、お互いを捕えて離さない。 

存在を確かめるように抱き合い、二人の距離がゼロになる。 
しっとりと交わされる口付けは、決して激しくはないが、互いを煽るには十分なほど、甘い。 

世の中が嘘を許される日に、仮初めの姿で出会い。 
その数年後の同じ日に、真実の姿を知った。 


そして、今日・・・・。 


「やっと、終わった」 
「あぁ」 
「全部、終わったよ」 
「頑張ったな」 


やっと掴んだ真実。 
今日からは、もう自分を偽らずに生きていける。 

「愛してる、新一」 
「あぁ・・・。愛してる」 

囁いた愛は、決して溶けることはなく。 
二人の間に熱く熱を持ったままとどまった。 


今日は、真実を許された日。 
二人にとって、それはとても幸せで、とても特別な日。 





携帯でカチカチしてブログに載せてたやつ。