新一バースデイSS その1



新一バースデイSS その1








誕生日おめでとう。 


今月に入ってもう、何回いわれたかわからない。 

必然的に、自分の誕生日を思い出すわけで。 

つーか。なんで、俺が知らないやつまで、俺の誕生日を知ってるんだよ? 

自分が紙面を賑わす有名人だと、まるで自覚がない様子だ。 

いや、自覚はしているのだろう。 

自分の記事を見てニヤニヤするような人間だ。自覚していないわけがない。 

ただ、ちょっと、鈍感なのだ。 

好きな有名人のプロフィールを熟知したい、というファンの気持ちに。 




5月3日。夜中の12時前。 

事件を解決して、やっと一段落、といったところ。 

ご飯をおごってくれるという顔馴染みの捜査一課の面々のところに向かうべく、警視庁内の廊下を歩いていた。 

解決に追われてしばらく寝ることを忘れていたことを思い出す。 

自覚すると睡魔が・・・。 

(あー・・。飯は今度つれてってもらおうかなぁ・・) 

昨日までは自覚していたはずの誕生日も、この時点ですっかり頭の中から消えている。 

あと、数分もしないうちに誕生日だというのに。 

捜査一課と書かれた扉の前。 

ドアノブに手をかけたところで、時計の針が、秒針さえもが12の数字の上で全て重なり、 

日付が変わったことを告げる。 

と、同時に。 

新一の制服の、ズボンのポケットに入れていたケータイが震えた。 

「あ?」 

扉を開けながら、携帯を開く。 

受信メール 一件。 










中に入ると、パンパン!とクラッカーがなり、捜査一課の面々、そして、蘭や博士や灰原までもがいる。 

「ハッピーバースデー!」 


工藤君、新一、という声がかけられる、が。 

新一はそれどころではなかった。 



笑顔で新一を迎えた面々は、新一の様子に首をかしげる。 


「新一・・?」 

「工藤君?」 

不思議そうに首を傾げる者。中には少し顔を赤くしているものまで居る。 

みんなが迎えた名探偵は、携帯の画面を見つめ、顔を真っ赤にして其処に立っていたのだ。 


はっと我に返った新一は、顔を赤くしたまま、「あ、ごめん。なんでもない」と言って、顔の前で手を振った。 

「携帯がどうかしたの?」 

蘭が新一の携帯を見ようとする。 

「ばっ、か!みんなっ」 

慌てて隠す新一。 

みんながわらわらと新一の周りに集まって、手元を覗こうとする。 

「隠されると気になるのよねぇ〜」 

佐藤さんがそういった。 

相手が悪かった。なんてったって、ケーサツ。 

「ホントに何でもないですから!!」 

見られたら困る。ホントに、どーしようもなく、困る。 

だって、相手はケーサツだ。 

けれど、意識すればするほど、恥ずかしくて顔が赤くなるのだ。 

だって、だって。まさかメールがくるなんて。 



新一はケータイを死守し通した。 

きっと、拗ねた恋人からのいたずら。最高に、嬉しいけれど。 

(帰ったら覚えてろ・・) 

仕事で、今は遠い空の下に居る恋人を思う。 




結局、新一が顔を赤らめたメールの正体は誰も知ることができず。 

名探偵の努力と根性により、迷宮入りとなった。 







『 件名:愛しの名探偵 

  本文:my dear 

  我が愛しい君の生誕の日に敬意を表して、 

  赤と白のバラを、藍に輝くLazuriteとともに、アナタの元へ届けましょう。 


  共に過ごせないことを、お許しくださいますか? 』





携帯でカチカチしてブログに載せてたやつ。