アイアイガサ
天気予報はほんとに当てにならない。
新一が学校から帰ろうろすると急に雨が降り出した。
どーしたもんか。大降りだ。走って帰る訳にもいかない。
一歩外に出たら一気にびしょ濡れになってしまうだろう。
「・・・う〜〜ん・・・」
(ま、いっか。そのうちやむかもだし、ここで本でも読んでよ。)
新一は昇降口にあるベンチに座って持っていた本を読み始めた。
しかし、待っても雨はやむ気配を見せない。
本も全て読んでしまった。
下校する生徒の姿も見えないし。
きっと、みんな帰ってしまったんだろう。
「あれ?新一、なにしてるの?」
「ん?」
不意に、声をかけられ、見上げるとよく見知った顔が目に入った。
「蘭・・。お前こそ、なんで?あ、部活?」
「うん、そう。で、新一はどーしたの?」
蘭が首をかしげて訊いてくる。
「あー、うん。蘭さ、お前、傘・・持ってる?」
「傘?持ってるけど・・・」
「ちょうどよかった。入れてくんねー?」
「呆れた。置き傘くらい置いときなさいよ。」
うるせーよ、と悪態をつく。
「いいよ、入って行きなよ」
蘭は傘をさして新一を誘った。
「あぁ、サンキュ」
新一は本を鞄になおし、蘭の傘に入ろうとした。
目の端に、人の影が見えた。傘をさして、こちらに来ている。
雨の中、はっきりと見えた。
「・・・蘭、わりー。やっぱりいいや。」
「え?」
新一の視線の先に目をやる。
「快斗・・・」
そう言って名前を呼ぶ、新一の横顔は何処となく嬉しそうで。
「新一!ごめんねー。遅くなっちゃって」
「それじゃ、新一。私は帰るわね。」
「あ、あぁ。悪いな、蘭」
二人で蘭を見送る。
「蘭ちゃん、どうしたの?」
「いや、傘に入れてもらおうと思ってさ。」
でも、快斗が来たから・・。と言う新一に、快斗が言った。
「電話してくれたらすぐ迎えに行くから!ダメだよ?他の人の傘になんか入ったら!!」
どうしてかわからず、首をかしげる新一に、快斗は念を押して、新一を頷かせ。
「じゃ、帰ろうか」
「あぁ。」
そう言って、示したか傘は1つ。
「・・・?快斗?」
「俺だって学校帰りなんだから。しょうがないだろ?」
「イヤだね」
「蘭ちゃんはよくてどうして俺はダメなのさー!?」
「蘭とお前じゃ違うだろうがっ」
「何処が、どう違うって言うのさ!」
「蘭はただの幼馴染だけど、お前は恋人だろう!」
勢いよく言って、新一は火が付いたように赤くなった。
つまりは、意識の差、ということ。
快斗は嬉しさを隠そうともせずに、ニッコリ笑った。
「新一、帰ろ」
そう言って手を繋ぐ。
「バカ!手ぇ、離せっ」
新一はそう言って快斗の手を振り解く。
「雨で人少ないから大丈夫だって、ね?」
「イヤだ!ほら、しっかり、傘持てよ。濡れるだろ」
それはつまり、1つの傘で一緒に帰ってくれるということ。
「うん!」
新一が照れているのは見なくてもわかるから。
快斗はとても嬉しくて。
これは新一の最大限の譲歩。
家に着いたら、思いっきりいちゃつけばいいし。
新一が、ホントは快斗とのスキンシップを嫌っていないのは、快斗が一番よく知っている。
なんだかんだ言いつつ。
二人は雨の中、新一の家へと、仲良く帰って行った。
ノーマルの方にある昔書いた新蘭を改造した奴なので、蘭ちゃんがフラれんぼでちょっと出てますが。
どうですか??
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