クリスマス・ツリー 急激に寒くなった12月。 秋なんかすっ飛ばして冬が来た感じがする。 タダでさえ寒いのは苦手なのに。 工藤新一は学校の帰り道をマフラーで口元まで覆い隠し、首をすくめながら歩いていた。 太陽が出ていればいくらかマシなのに。 今は空は重く冷たい雲に覆われている。 知らずため息が漏れる。 雪とか降ったら・・、アイツはしゃぎそうだよなー・・。 今のところ、そう言う予報はないけれど。 知らずに考えているのは恋人のこと。 家に入り浸っては泊まって帰ることがしばしば。 新一の隣の部屋は既に快斗も部屋のようなものだ。 きっと、家に帰ったら快斗は既に居るだろう。 暖かいリビングで自分を待ってくれている、と自惚れでなく確信している。 帰ったら暖かいコーヒーを出してくれるに違いない。 新一は歩く足を速めた。 「早く帰ろ・・」 誰に言うでもなく小さく呟いたその声は誰にも聞かれることはなく。 白い息と共に空気に溶けた。 「ただいまー・・」 玄関を開けて靴を脱ぎながらそう言うと、リビングから快斗が顔を出す。 「お帰り、新一!」 それに、今度はしっかりと顔を見てただいま、と告げるとどちらともなく顔を近づけてキスを交わす。 始めのころは嫌がっていた新一も、もう、すっかり慣れてしまった挨拶のキス。 リビングに入って、新一がソファーに座るとすぐに快斗がコーヒーを持ってきた。 「寒かったでしょー」 「あぁ。早く学校休みになんねーかなぁ・・」 マフラーを外して、ネクタイを緩める。 コーヒーに手を伸ばして、目には言ったのは大きなツリー。 そして気付く。そこら辺に散乱しているゴミやら飾りやらに。 「・・・・・なんだ、これ」 「え?クリスマスツリーだよ?」 「んなことは見りゃわかる。どっから持ってきたんだ?」 「ん?新一のうちにあったよ?なかったら俺の家から持ってこようと思ってたんだけど」 そういって、ツリーの元へ向かい、途中だった飾り付けを再開する。 「へぇ・・・」 新一は何年かぶりに見る大きなツリーをボーっと見上げる。 もう原型は出来ていて、後は、綿を乗っけたり飾りをつけたりするだけだ。 鼻歌を歌いながら楽しそうに飾り付けをしている快斗に、新一はコーヒーをテーブルに置いて傍に行った。 「ん?どしたの、新一?」 「・・・俺もする。」 そう言って転がっていた飾りを手にとってツリーにつけた。 「うん!やろやろ♪」 嬉しそうな快斗に新一も笑って返して、二人でツリーを作った。 ああしたほうがいい、とかこっちのがいい、とか言い合いを繰り返し。 ツリーが出来上がったときには外は真っ暗だった。 「あー、ご飯作らなくっちゃ」 「あぁ・・。そんな時間か・・・」 時計を見てそう言う。 「楽しかった?」 「あぁ」 以外に夢中になってしまった。 大きなツリーに、飾りも多い。 らしくもなく、てっぺんの星をどっちがつけるかで言い合いをしてしまった。 一人のときはツリーなんて出すこともしなかったし、思い出すことも無かった。 クリスマスを近くに感じる。 散らかったリビングの片付けは快斗にやらせるし。 ご飯を作りにキッチンへ行った快斗を見送って、新一は再びツリーに目をやる。 こんなにツリーを作るのが楽しいなんて。 それはきっと、快斗が居るから。 これが学校の連中だったらこんなに夢中にならなかったと思う。 初めて恋人と過ごすクリスマス。 今年のクリスマスは楽しいだろうな。 絶対、快斗には言ってやらないけど。 たまには一緒にご飯をつくろうかな、と新一は腰をあげてキッチンに向かう。 ビックリして、驚く快斗を想像して新一は楽しそうに笑った。 戻