4、無言で触れる背中。





今日も違ったか。

仕事の帰り、その白い怪盗が音も無く降り立ったのは
愛しい探偵の元。

電気のついていない彼の部屋に勝手に入り、
その白い衣装を脱ぎ去る。

ポケットに入れていた宝石を取り出し、布にくるんだまま机の上におく。
ビックジェルといわれる至高の石なのに、その扱いはひどい。

この広い家に一人住む探偵は、まだリビングだろう。
そして、自分が戻ったことにも気付いたはずだ。

それでも、リビングで待っていてくれる。

人間に戻った魔法使いは、その部屋を出て、自分を待つ彼の元へと向かった。



「おかえり」
「うん、ただいま」


リビングに入った快斗に、新一はそれ以外何も言わず、台所へと消えた。
それを見送って、快斗はソファーに座る。

すぐに戻ってきた新一は、コトっと音を立てて、快斗の前にコーヒーカップを置いた。
ミルクと砂糖たっぷりのカフェオレ。

「ありがとう」
「あぁ」

新一は、快斗のなりに座って、もたれかかる。
新一の入れてくれた甘いカフェオレを一口飲んで、
右から伝わってくるぬくもりに、ほっと息を吐く。

新一は、何も言わない。
だけど、突き放さない。
こうして傍にいてくれる。

快斗は背中を預けてくれる新一に、もう一度言った。

「ありがとう」

小さく、微笑む気配がした。