1  奥歯を噛んで



「っく・・」
「イイですよ、名探偵・・・。だいぶ、慣れてきたみたいですね・・・」
「ちがっ、あぁ・・・っ!」

強く奥を突かれ、新一は高ぶっていた熱を一気に解放させた。
奥でキッドが弾けるのを感じながら。


気がついたら外は既に明るくて。
新一は重たい身体を起した。

アイツはここにはいないのに・・。心の中で新一が呟く。
俺の身体にはしっかりとアイツが刻まれている。

新一はベッドから降りると風呂場へ向かった。



この関係が始まったのは最近だ。
キッドは仕事のあとに寄って、俺を抱いて、帰っていく。
何時終わるのか、どんな風に抱かれるのか。それは全部アイツの気分次第。

理由はわからないけれど・・・。
きっかけはアイツの正体に気付いてしまったから、かもしれない。
バカ正直に尋ねた俺が、文字通り馬鹿なんだけど。

だるい腰をかばうようにして風呂場に行き、そのまま浴室に入る。
脱ぐ服なんてない。

シャワーのコルクを回すと、冷たい水が出てくる。
徐々に熱くなってくるそれに、目を閉じる。
水のほうがよかった。身体も頭も冷やすために。

冷水にして、壁にもたれながら、頭からシャワーを被る。
浴びながら、きつく目を閉じた。
心にも蓋をするように。自分の気持ちを見ないように。気づかないように。

全て冷えていく。冷たすぎるソレが気持ちよかった。
一緒に冷めていけばいい。この想いも全部。

きつく目を閉じながら、俺は色んな痛みに耐えるように、ギリッと奥歯を噛んだ。