2 辛くなんかない 工藤新一と身体の関係を持ってから、どれくらい経っただろう。 まだ大して日は経っていないだろうけど・・・身体だけは沢山重ねた。 心の伴わないその行為を、それでも止めることが出来なくて。 白い衣装のまま工藤邸を訪れては、その身体を抱く。 なんでだったのか、どうしてこんなことになったのか・・・。 好きだった自覚はあった。彼のことを好きだった。 だけど、こんな関係を望んでいたわけではないのに。 学校の下校途中。 友達と笑いながら、寄り道して帰っていて。 その時。ばったりと出会った。工藤新一と。 向こうも友達と一緒で。けれど、俺に気づいた。笑っていた顔が強張る。 目を見開き、それは、俺しか気づかないような一瞬の変化だったけれど。 その変化をわかるのが自分だけだと言う優越感。同時に、後悔。 もっと、早く・・・こうして会っていたら・・・。 そんなことを考えるほどに、心の中では後悔している。 決して、表には出さない本音。 かかわりたくなかった。このまま、通り過ぎたかったんだけど。 「あー、工藤新一!?」 俺は心の中で舌打ちした。同時に諦めもした。 仕方ない。そこにいるだけで人目を引く綺麗な人だから。 「うっそ、本物。すごいっ」 新一の周りに人が集まり、新一は笑顔で相手をする。 イラつく。俺は、決して彼の笑顔を手に入れることは出来ないから。 俺が、自分でそうした。 「ほら、快斗もおいでよ!」 青子に腕を引かれ、しかたないとため息を付く。 「初めまして、工藤新一君」 「・・・初めまして」 ハジメマシテ。 どれだけセックスを繰り返しても、外で会えばはじめまして。 彼と関係を持っているのは黒羽快斗じゃなくて怪盗キッド。 友達にも恋人にもなれない。 ライバルですら、なくなってしまったかもしれない。 自業自得。 ――――――辛くなんかない。 そんなこと、思っちゃいけない。 人に囲まれて触れれる新一を見て、ムカついても何も出来ない。 近づくことが、出来ない。 戻