4 溜め息で殺した その日、起き上がることが出来たのはもう夕方を過ぎて、外が暗くなる頃だった。 外は雨。 窓を打ち付けてくるほどの大雨なのに、今はじめて雨が降っていることに気が付いた。 何をしていて、何を考えていたのか、思い出せない。 眠っていたのか、起きていたのかさえも曖昧で、頭が働いていない。 むしろ、考えることを拒否しているようにさえ感じる。 横になっていたはずなのに、身体は全く楽にならない。 重い体を持ち上げて、俺はベッドを出ると風呂へ向かった。 身体はまだ、KIDに抱かれたままだったから。 昨日までの暑さが嘘のように今日は涼しい。 今の俺にはそれがとても寒く感じて。 火傷しそうなほど熱いお湯が心地よかった。 一人きりのリビングで、俺は何をするでもなく、ソファーに座って雨の音を聞いていた。 飯を作るのも面倒だし動くのもだるい。 手を伸ばすのも億劫で、そのままソファーに横たわった。 疲れている気はするのに、眠れない。 ボーっと雨の降っている外を眺めていた。 いつから降っているんだろう。 KIDは濡れずに帰っただろうか。 今度の予告はいつだろう。 今度俺に会いに来るのは何時だろう。 会いたくない。 会いたくないのに。 もう嫌だと思うのに。 アイツのことを考えることをやめられない。 こんなに苦しい、これは恋なんじゃじゃない。 愛なんかじゃない。 そんなやさしい感情なんかじゃない。 苦しくて、呼吸さえ出来なくなりそうな。 身体を中から蝕んでいくような。 重くて強い感情。 こんなになっても、アイツを好きだと思ってしまう自分が嫌になる。 それとも、アイツを好きだと思うからこんな風になってしまうんだろうか。 何かが頬を伝う。 息が苦しくなって、耳鳴りがして、目の奥が熱くなる。 頬を伝う何かが涙だとわかった。 誰が見ているわけでもないのに、なんだか、嫌で。 腕で目を覆い隠し、口から漏れそうになる嗚咽や痛みを、溜め息で殺した。 戻