第一話




夏の夜。
いつものように仕事をし、帰路につく。
今回もやはり違った。
自宅に帰るため、人目の付かないところで元に戻って、
いつもの様に、家に帰る・・・。
そう。そこまではいつも通り・・・。
でも、そこで見てしまった。
いつもと違う、あり得ない・・・・光景。
ここから、快斗の生活はがらりと変わった。
自分が、キッドを受け継いだ、ときのように・・・・・。



その光景を見たときは、一瞬、カップルがヤってんのかと思った。
でも、どこか様子が違って。よく見たら、女の方は、あんま意識がないみたいで、
男の方は、その女の首筋らへんに噛みついてて、血が・・・・滴ってた。



女の方も綺麗な方だと思ったけど、俺はそっちはどーでもよくて。
俺が目を奪われたのは、その男の方。
綺麗だった。そう、綺麗・・。そんな形容詞がよく似合う。
綺麗な横顔。口の端から飲み零したらしい血が流れて顎を伝う。
そんな光景を見てるのに、恐怖心すら沸かなかった。
平気でその光景を受け入れてた。あぁ、この人は吸血鬼なんだ、って・・・。
女を助けようって気も起きなかった。
ただ、俺は、そいつが・・・その男が欲しいと、手に入れたいと、そう思った。
ほとんど、一目惚れだった。
あぁ、そうか。一目ぼれなんだ。そう気付いて納得するのに、そう時間はかからなかった。




男が、女から離れる。
零れた血を指で拭い舌で舐めとる。
目があった。俺によく似た顔をしてた。
俺はその女が死んだんだと思ってた。
そんな俺の考えを読んだのか、そいつが口を開いた。
「彼女、死んでないよ・・・。ちょっと、血を貰っただけだから・・・」
綺麗に、すんだ声だった。
そいつはまっすぐに俺の目を見て、言ってきた。
「あんた、ずっと見てただろ・・・?」
「あぁ」
こっちに歩いてくる。
顔がはっきり見えた。綺麗でまっすぐな、汚れのないディープ・ブルーの瞳。
「あんた、俺が怖くないの・・・・?」
「怖い?どうして・・・?」
どうして怖がる必要がある?今の一瞬でこんなにも、心を奪われたのに・・・。
「どうしてって・・・・・・・。は、あははっ。ははっ」
俺がそう言うと、そいつはいきなり笑い出した。
驚いた。急に笑いだしたからじゃない。
笑った顔がや、驚いたようにキョトンとした顔が、凄く、幼く、可愛く見えたから。
「おもしろい。普通、こーいう場面見たら、もっと、こう・・・。別の反応、するんじゃねぇ?」
まだ少し笑いを残しながらそういってくる。
「あー。そうかもね。でも、別に平気。ねぇ、あんた名前は・・・?」
「へ?」
「俺、黒羽快斗。」
「・・・・・・・工藤・・・、工藤、新一・・・」
「へぇ・・、新一って言うんだ・・。」
無条件でいい名前だって思った。
「あぁ。・・・あんたが、初めてだ。ホントの名前、名乗ったの・・・。
不思議だな。なんか、あんた・・、不思議な感じがする。」
照れたように、嬉しそうに笑う。
綺麗だと思った。カワイイと思った。
・・・・・・抱きしめたいと、思った・・・・。
そう思った時には、もう身体が動いてた。
手を伸ばせば、届く位置にいた新一を引き寄せて、抱きしめた。
「お、おい!ちょっ!!」
「なぁ。俺、新一が好きなんだ。」
慌てる新一に、俺はそう、告白した。