第十三話 自室で、新一はベッドに突っ伏していた。 快斗のバカ野郎っ!! あんなこと、あんなこと、あんなことっ!!! 信じらんねーっ 自分だけだなんて。 なんでそんなこといえるんだろう。どうして・・・。 むかついて、快斗なんか無視して寝てやろう、と思って目を閉じたとき。 コンコン とノックの音。 新一はそれすら無視した。 だって、相手が誰かわかっているから。 もう一度ノックの音が鳴る。 「・・・・・」 新一はドアに背を向けて、布団の中にもぐった。 ドアが開く気配がした。 「新一・・・」 「・・・・」 「新一・・・・」 快斗がベッドのふちに座った。 ギシッとベッドがきしむ。 「新一」 布団から出ている頭を快斗が撫でる。 「さわんな」 ぼそり、布団の中からくぐもった声が聞こえた。 「ごめんね・・?」 「うるさい」 「ごめんね・・・」 身体を屈めて、頭にそっとキスを落とす。 「っ・・・」 「俺、傷つけたよね。ごめんね? ・・・・でも、新一の口から、ちゃんと聞きたいものなんだよ・・・?」 「・・・・・」 何も言わない新一に快斗はふぅ、とため息を付く。 「ねぇ・・・新一ってば・・・。」 何か言って欲しくて、言葉にイラつきが含まれる。 それに新一が反応した。 ごそ、と動く気配がし、新一が快斗の方を見て布団からちょこっと目だけを覗かせた。 そして、快斗を見上げてくる。 「・・・快斗。」 声をかけられ、快斗が新一に目を遣り、その可愛さにくらっと眩暈を起こしそうになった。 なにやってんだよ、新一・・・。それは、なにか?誘ってるのか?? 大の大人が・・・いや、まだ子供か?いや、んなことはどうでもいいんだよ。 ・・・・可愛いんですけど、新一君・・・・? 「・・・あの、快斗・・?」 不安げな、くぐもった声が聞こえる。 「え?あ、あぁ・・・うん、なに?」 「なに・・って。快斗が、・・・言うから・・・」 そうだった。忘れて・・いや、決して忘れてないぞ。 「俺、せっかく・・・ついさっき、その・・・」 「セックス?」 「違うっ!!両想いになったのにっ」 「うんうん。なったのに?」 「っ・・・、のに・・。もう、こんな・・・喧嘩とか、イヤだから・・・。」 「・・・うん。」 新一が、布団からでて、ベッドの上に座りこむ。 「向こう、むいてろよ」 「え?」 「いいから、向いてろよ!!」 そして、快斗の背中に抱きついた。 「新一・・?」 しかし、返事はない。 新一が、快斗の背中に額を押し付ける。 「・・・ちゃんと・・・・、快斗のこと・・・。ちゃんと、好き・・・だから・・・」 それは、とても小さな告白だったけれど。 精一杯に恥ずかしさを隠したような、声だったけれど。 それでも確かに快斗に届いた。 恥ずかしがる新一が可愛くて。愛しくて。 好きな人に好きだといわれることが、こんなに嬉しいものだとは思わなかった。 自分が 好きだ というたびに、新一もこんな気持ちになるのだろうか。 とても、抱き締めたいと思った。 新一を・・・愛したいと思った。 前 戻 次