第十二話 「ん。んぅ・・・?」 身体を包む暖かい感触に新一は目を覚ました。 「あ・・?」 声が反響する。部屋じゃない・・。 「あ、新一。おきた?」 「・・、快斗・・・?」 身体を起こそうとすると、チャプ、と音がした。 「風呂?」 「うん、新一、後あとすぐダウンしちゃってね?俺が水を取りに行ってる間に寝ちゃって。 体、気持ち悪いだろうなって思ったから、一緒に風呂に入れちゃった。」 身体はもう綺麗にしたからね、とニッコリと言う快斗に、気恥ずかしくて居たたまれなくなる。 綺麗にした、ということは、つまり・・。 後始末もしてくれて、全て洗ってくれた、ということで・・。 「わりぃ・・」 ふい、と顔をそむけて、そっけなく礼を言う。 そんな新一を見て、快斗はにこりと笑みを浮かべた。 快斗は、身体についた泡を流すと、新一のいる浴槽に向かい合う形で入った。 「体、平気?」 「大丈夫だ。」 「ならよかった。」 会話がなくなると動くたびにチャプチャプと響く音が大きく聞こえた。 「まだ、夕方だよ・・」 「だな。」 風呂場の窓から赤い光が差し込んでる。 新一が快斗の方を見る。 ・・・初めてキスしたときと同じ衝動。 逞しい身体に、首筋に見える自分の噛んだ痕。 「あ・・?」 「ん?どうした?」 「血・・。快斗、怪我してる?」 「へ?特に・・、あ、あぁ!」 怪我してるか、と訊かれてわからず首を捻ったが、自分のひりひりしている背中が原因だろう。 「これじゃない?」 快斗は後ろを向いて新一に背中を見せた。 「あ・・・」 ソレをみて、その痕が何を示すのか知った新一は顔を赤くした。 「ごめん、快斗・・。」 「いいよ、痛かったんだろ?俺こそ、無理させてごめんな?」 振り向いて、そう言う快斗の背中に、新一はそっと身体を寄せた。 「新一・・?」 しかし、新一は答えず、そっと、背中の引っ掻き傷に唇を寄せた。 「っ・・・」 ピリッとした痛みと、甘い疼き。 新一の唇と舌が快斗の背中の傷を丁寧にたどっていく。 「新一、もう・・いいから・・・」 一通り傷をたどった新一に、快斗はやんわりと静止した。 「ん・・。」 離れた新一に、快斗は向きを変え、新一の方を向くと新一を抱きしめた。 「もぅ、煽んないでよ。頼むからさ」 「え?」 「無理させたくないんだから。傷、このくらい大丈夫だよ。すぐ治る」 そう言って、新一に口付ける。 「っ、なにすんだ!」 「新一だって俺の身体にキスしたじゃねーかよ」 「っ、あーもう!!上がるからなっ」 新一は快斗から逃げるように風呂を上がった。 「んもー。もっとイチャつこー?せっかく恋人同士になったのにー」 「っ、うるせー!!誰がっ」 風呂場から、そう言う快斗に、新一は真っ赤になって怒鳴る。 今、快斗に見られていないことを心からよかったと思った。 「え、違うの?そう思ってたの俺だけ・・?」 「――――――!!!いわねーとわかんねーなら、一生そう思ってろ、バカヤロー!」 慣れてねーんだよ、バカ!ただでさえ、苦手なのに。 想っている、と伝えた。キスして・・セ・・ックスも、して・・。 なのに・・・。なんで、そんなことが言えるんだ。 快斗の台詞に、殴ってやろうかと思いながら、新一は怒って風呂場を後にした。 はぁ・・。 風呂で、快斗はため息を付いていた。 ・・・怒らせた。 風呂場を出て行く新一の気配に、快斗はノロノロと浴槽を出た。 「わかってるけどさぁ・・。やっぱり、言葉で聞きたいじゃん?」 さっきの台詞だって、本気で言ったわけじゃない。 でも、あんなに怒ったってことは・・、やっぱり傷つけたよなぁ・・。 快斗は服を着ると風呂場を出て新一の元に向かった。 仲直りのために。
いつもよりも、さらに短いですね(汗) でも、あと2.3回で一部は終了です。 え?一部・・って何?って?ふふふ・・・(爆) 前 戻 次