第九話




学校帰り、HRが終わって、かばんを持って教室を出て行く。
廊下を、昇降口に向かって歩いていく。かけられる挨拶に抵当に返事をして。

あれ?なんか、慌しい・・・。
昇降口の辺りから、みんながざわついてる。
どうしたんだ・・・?
予感がした。まさか・・・。

「見てきたっ!門のトコ。すっげー美人!」
「えー?カッコいいよー。男の子じゃん」
「あの制服って、帝丹だろ??」
「んで、黒羽にそっくりなんだって!」

聞こえてきた、その会話。
・・・帝丹の制服で、きれいで、かっこよくて男で・・・俺にそっくり・・?

「誰待ってるんだろうねー?」

だれって。それって・・・もしかしなくても・・・っ!!

俺は急いで靴を履いて校門に向かって走った。
遠巻きに、その「噂の男子高校生」を見ている人だかりに割って入る。

「新一っ!!」

新一が、ゆっくりこっちを向く。あぁ、一週間ぶりの新一だ・・・・。

新一はこれだけの人だかりの中、まったく気にしていなかった。
人目、気にしろよ少しは・・・。

「快斗・・・」

そう言って、やわらかく微笑む新一は、緊張するほどきれいっていうか、可愛いっていうか・・・。

「・・快斗・・?」

見惚れていた俺に新一が首をかしげながら近づいてくる。
ちょ、新一さ・・、しばらく見ないうちにってか、ここ一週間でなんか。
可愛くなったって言うか・・なんか・・・。
なんか、あったのか・・?
・・・俺の知らないトコで・・・。
そう思って、ちょっとむかついた。

「・・どうかしたのか?快斗・・?」

「新一・・、こそ・・。どうしたんだよ?こんなとこ・・で・・・」

あぁ、みんなが見てるっ!!

「・・・・・話、したくて・・・・。いい?」
「あ、あぁ・・。っと、ここじゃ、ちょっと人が多いから。」
「うん。」
「・・・新一のうちでいい?」
「あぁ」

俺たちは、学校の皆の好奇の視線を背中に受けながら新一の家へと向かった。







一週間ぶりの新一の家は、全然変わっていなかった。
快斗はリビングのソファーに座り、新一を待った。

しばらくして、新一が飲み物を持って戻ってきた。

「はい・・」

静かに快斗の前に麦茶を置く。

「ありがと・・・」

受け取って静かに飲む。
無言で、時間だけが過ぎる。
時計の針の音が聞こえる。

「・・・んで、話って・・?」
「あ、うん・・」

俺から話を切り出すが、そう言って黙ってしまう。
また、沈黙。
もー、キリないしっ!
つか、俺も・・・色々新一とは話がしたいんだけどっ!

俺は、かばんを持って立ち上がった。
新一が俺を見上げる。

「用、ないなら・・俺、帰るし・・・」
「っ、快斗っ!」

背を向けた快斗を、新一は服を掴んで引きとめた。
裾を掴まれ、快斗は振り返る。

「待って。話って・・言うか。だって、お前。
 この間・・・、また来るって言ったのに、あれっきり、音沙汰なしだったから・・・」
「・・・・だから?」
「っ、だからっ!」

新一は、そう言って勢いよく立ち上がり、快斗に掴みかかった。

「なんでアレっきりなんだよっ!なんなんだよ、お前!!どうして、お前が俺を避けるんだっ!
 俺のこと、好きだって言ったくせにっ、責任とりやがれ、バカヤローっ!!!」

驚いたのは快斗だ。
え、新一は今、なんて言った・・・?どういう意味・・・?

「新一・・?それって・・・」
「・・・、俺は、お前に好きだって言われるの、嫌じゃなかったし!・・キスも、イヤじゃなかったっ!!
お前が来なくなって、・・・・気になって、つまんないってか・・・会い、たくて・・」

だんだんと小さくなっていく新一の声に、快斗は耳を疑うようだった。
それって・・・、それは、つまり・・・。

掴みかかっていた新一の手は、もう、快斗の服を握り締めているだけ。
新一は、快斗の胸に頭を押し付け、顔を隠した。

「言わせんな、バカヤロー・・・」

うわっ・・・。くらくらする。可愛い。

「好きだよ・・・、新一・・・。ごめんね?寂しくさせて・・・」

戸惑いながら、それでも、快斗は新一を抱きしめた。しっかりと。
少し身じろいだがそれでも、抜け出そうとはしなかった。

「俺が、好き・・・?」
「・・・・んなこと、言ってねー」
「嫌い?」
「・・・だったら、こんなこと、させねぇし・・・」

素直じゃない新一の返答に笑みがこぼれる。

「ねぇ、新一・・・、好きだよ・・・」
「・・・・知ってる。」

そう言って、新一が笑った。




いつ、終わるんですかね・・? 自分でも、終わりが来るのか不安になってきました(汗) 皆さん、この話好きですか?(ぇ