本気のキスをしよう

第五回



「あ、んっんー…」
俺はベッドの上で女みたいな声を上げていた。
いつ閉じてしまったのか。
ぎゅっと力いっぱい閉じていた目をそっと開けてみると、目の前にはよく知った顔があった。

「っ、・・あ、きら・・・っ」

オレを抱いていたのは晃だった。
なんで、こんなことになってんだよ…?
そう思うのに、俺はたいした抵抗もせず愛撫に身をまかせていた。

「あっ、ぅ・・・ん、んっ」
「夕映・・・」

耳元で聞こえる晃の声がすごくセクシーで、俺は背筋をゾクリと震わせた。
すっげー、きもちぃ…。

「あ、あ、晃っあき…んっも、いっちゃっ・・・ぁ」
「いいよ、イって」

俺の、アレを扱く晃の手の動きが速くなって・・・。

「あっぁ、あー・・・っ」

俺はそのまま、晃の手でイってしまった。








「・・・・・・・・・」

気がつけば、そこはリビングのソファーの上で。次第に頭がはっきりしてきて、
今のが夢だと言うことがわかった。

「・・・・・・しんじらんねー」

なんつー夢見てるんだよ、俺はっ!
下着もしっかりと濡れている。
はぁ・・・。
ついつい大きなため息が口をついて出る。
ついさっきまで晃にあってたからか?
晃相手に夢見ちゃうほど、俺は欲求不満だったのか??
なんで晃??
夢の中の俺は、全然嫌がっていなかった。
・・・なんで?

俺はのそのそと起き上がると、風呂場に向かった。
着替えついでに風呂に入ろう。その方がきっとスッキリする。

ただ・・・。
当分、晃とは顔を会わせられないかも・・・。
まぁ、そんなすぐに会う事はないだろうけどさ。

そう思ったのに。
晃と会うその日は、すぐにやってきてしまったのだ。












あの夢を見てしまってから2日がたった。
とりあえず、今のところ例の夢は見ていない。
今日も講義が終わって、さて帰るかーと立ち上がったところに。
ポケットの中の携帯がブーブーと震えた。

ポケットから取り出して、相手を確認することなく出る。
非通知と登録してない番号は着拒否してるからなんだけど。
出なきゃ良かった、と後悔したのは初めてだった。

「もしもしー?」
『あ、夕映?俺・・。晃』
「あ、晃っ!?」

俺は思わず大きな声を出してしまう。
教室に残っていた奴らが俺を見る。
は、はずかしっ・・・!

俺は鞄を掴んで教室を出た。

「あ、晃・・・?」

電話の向こうに、そう話し掛けると、小さな笑い声が聞こえた。

『夕映、声でかすぎ』
「あ・・ごめんっ!あ、で?えっとー、どうかした??」
『うん、夕映、今どこにいる?』
「どこって・・大学だけど?」
『その大学に、今きてるんだけど。食堂で深山と一緒にいる』
「はっ!?」

な、なんで晃が来てんだよ!
つか、深山。授業に出てないと思ったらそんなとこでサボってたのか・・。

『だから、来てるんだって。今からこれる?』
「え、あ!うんっ、いけるよっ!」
『じゃ、待ってるから』

そう言って電話が切れた。

勢いで行けるって、会う約束しちゃったけど。
だけどっ!ど、どうしようっ!?俺、どんな顔して晃に会ったらいいんだっ!?
でも、行くって言っちゃったから、行かないわけには行かないし。
深山が一緒ってことは、下手な嘘もつけないし。

5階の教室から1階の食堂までなんて、階段で降りてもすぐだ。
そんなに時間もない。
人間、諦めが肝心・・じゃなくて、男は度胸だ!
覚悟を決めて、俺は食堂に向かった。