本気のキスをしよう

第四回



「ん・・・」

なんだか、頭がいたい。体もだるい。

「う゛ー・・・」

枕に顔を埋め、ダルさに唸る。俯せって寝るのは癖だ。
ゆっくりと体を起こして部屋を見渡す。
ここ、は・・自分の部屋?
カーテンの隙間から太陽のが差し込んでいる。
時計を見るともう昼を過ぎていた。

「・・・」

なんで俺、ここにいるんだろう?
うーん、と首を傾げる。
昨日は合コンで。合コンってことは、男女での飲み会ってことで。
やっぱり晃は女の子達に人気で、なんだか楽しそうに話してるのを見るのがイヤになっ
て・・・。
加減をせずに飲んだんだっけ?
 
「・・・」

覚えてない。
頭痛のせいだけじゃなく、頭を抱えた。
って言うかなんだよ、俺がヤケになった理由・・。
そんな、ヤキモチ妬いてる・・・みたいな・・。

「夕映、起きたか?」
「え?ぁ・・晃・・・!?」
「飯食えそうか?」
「あ、うん・・平気・・」

なんで晃がここに??

きっと俺は不思議そうな顔をしているんだろう。
晃は苦笑を浮かべると、ふい、と顔を背けて言った。

「じゃ、飯作ったから。着替えたら来いな」
「あ、おう」

そう言って晃が扉を閉めた。
どうしたんだ?何で顔を反らすんだよ。
不思議に思って自分の姿を見下ろして、思わず赤くなってしまった。
だって、なにも着ていなかったから。上も下も。
男同士なんだから、気にするこのないんだろうけど。けど!
なんだか、晃に見られたんだと思うと恥ずかしくなってくる。

そーいえば、なんで晃がいるのか聞きそびれた。
ま、いいや。飯食いながら聞くか。

俺はベッドを出て服を着ると、晃の待つリビングに向かった。

「おはよー・・・」
「おはよう、夕映」
「うわ、うまそー」
「大したものじゃないけどね。ごめん、勝手に台所借りた」
「あぁ、そんなんいいって。飯作ってくれてありがと」
「どういたしまして。それより、夕映。おじさんとおばさんは?昨日会わなかったんだけど・・」
「あ?あぁ。転勤でさ、大阪に行ってんの。俺が大学に入ってすぐの頃から」
「そうだったんだ・・。鍵とかさ、どうしたらいいかわからなかったから勝手に泊まったんだ。ごめんな」
「そーだったんだ。全然いいよ。晃だしな!逆に世話して貰って悪いくらいだ」

いただきます、と言って箸をすすめる。
昨日話せなかった分も、沢山晃と話をしたかった。
そして、ふと思った。俺・・服着てなかったんだよな?今日起きたら裸だったもんな。
もしかして・・なんかやらかしたんだろうか?
そう思ったら急に不安になってきた。

「あ、あのさ…晃。俺・・昨日なんかやっちゃったかな?」
「なんかって?」
「いや、途中から・・全然、記憶が無くて・・だから」
「なんか出来る元気もないくらい酔ってたよ。だから大丈夫」
「そ、そっか・・」

俺はほっとして息を吐いた。





「んじゃ、ホントにありがとな!」
「あぁ。飲みすぎには気をつけろよ?」
「大丈夫だよ!」

玄関先に晃を見送りに出る。
久しぶりに会った晃。
ここで別れたら、また疎遠になってしまうんだろうか。
なんだか、それが嫌で。

「また今度、遊びに行こう?今度は二人でさ、合コンじゃなくって」

俺は晃にそう言っていた。
すると晃は驚いたような顔をして、次には可笑しそうに笑った。

「あぁ、そうだな。全然話も出来なかったし。またメールするよ」

よかった。これでサヨナラじゃない。また、会える。
またな、と手を振って、晃の姿が見えなくなるまで見送って、俺は家の中に戻った。

「ふぅ〜…」

記憶ないくらい飲んで酔っ払ったのにこんな軽い二日酔いですむなんて、俺の体って丈夫
だったんだなー・・。
ソファーに寝転がって、俺は天井を見上げた。
なーんか、寂しい。一人なんていつもの事なのにな。
久しぶりに晃が来てたからかな。

そういえば、と思う。
昨日のあのモヤモヤした気持ちはなんだったんだろう。
飲みすぎた原因はわかった。でも、その気持ちの出所がわからない。
友達を取られてむかついたのか?いや、そんなことないだろう。
そうだとしたら、晃だけじゃなくて他の奴にも同じ気持ちを持たなくちゃ変だもんな。
じゃ、なんで?あんな、ヤキモチみたいな…。

「あー、もう!わっかんねぇーっ!」

クッションを抱えて叫ぶ。
あー、もう、いいや。わかんねーし、寝ちゃえ。
考えたって、わかんないもんはわかんないんだし。
きっとそのうちハッキリするはずだ。

俺はそのまま眠っていた。






物語がすすまないー・・