第六話





やっちったー・・・。

風呂場で、快斗は後悔に打ちひしがれていた。
キスするつもりなんて、なかったんだ。
もっと、もっと・・・新一が俺のことを、そういう意味で好きになってくれるまで待つつもりだったのに。

シャワーの下で、うなだれる。
どうしよう・・・。新一は今、どうしてるんだろう。
どんな気持ちでいるんだろう。

凄く、怒ってるかな。困ってるかな・・。
悶々と考えるが、あくまで想像でしか出来ない。
でも、反応を見るのが怖くもある。

今まで女遊びばかりで、まともな恋愛なんてあまり経験がなくて。
そりゃ、初恋がまだなんて言わないけれど。
こんな気持ちは、初めてで。こんなに誰かを想ったのは初めてだから。

自分の理性が、あんなにももろく崩れ去るなんて・・・。
風呂って言う理由がなかったら、きっと・・・何をしていたかわからない。

・・・ーあー!!もぅ、こんなとこで考えてても埒があかない!!!
すくっと立ち上がって、シャワーを止める。

風呂を出て、脱衣所で軽く頭と身体を拭き、ズボンに半袖のシャツを羽織るとタオルを首に引っ掛け、新一の待つリビングへ向かう。

殴られるだけなら・・・いい。
もし、追い出されたら・・・?それより、友達すらやめられたら、どうしようか・・・。

えぇい!!悩むのはやめたんだろ?黒羽快斗!!
怪盗キッドの名が泣くぞっ

リビングに続くドアへ手をかける。取っ手をさげる。音を立てず、静かにドアが開く。
新一の姿が見える。

快斗は、見ることはなかった。
赤くなりうろたえる新一の姿を。

快斗が戻ってきたのは、新一が落ち着きを取り戻した、ほんの5分後・・・。